吉本さんの芸術論 もしくは 言語論

by Keraoc

昨日は夜にNHKで，吉本隆明の講演をまとめた番組がやっていて，TVを珍しくちゃんと見た気がします．これまでの著書で言ってきたことを総まとめにした感じの番組．

番組冒頭，1945年8月15日，終戦に際して世界を認識するための道具立てを持っていなかったと吉本は絶望して，どうすれば世界を認識できるかって事を考えて，アダム・スミスからマルクスまでの古典経済学を学んだと．

話しは，アダム・スミスのいう価値（労働価値）から始まって，だけれども芸術の価値を考えた場合，それでは説明できない※，と．．．
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沈黙，自己表出，指示表出という吉本さんのいつもの言葉で，文学など言語の芸術論について話しが進んでゆき．．．

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僕は学部の3年くらいまではこの辺の本や文学と言われるものばかりを読んでいたで，その説明の仕方などに馴染みはあるのだけど，そんな方法で世界が認識できるのかなぁと懐疑的．．．

論証は自然科学の方法に比べれば検証はできないに等しいし，対象を操作できないし．．．それ以上に，自分が世界を認識できたか（わかったか）どうかをどうやって確かめるのかよくわからない．

親父の本棚には，聖書や古事記からサドや沼正三まで広範にたくさん本があったから，学部の3年頃までは勝手に引っ張り出してきて，それなりに読んだと思う．もちろん，夏目漱石だの森鴎外だの吉本隆明周辺の本もあった．僕にとっては，とってもおもしろいと思ってしまったり，感動してしまうだけに，言葉にだまされてるような気になるんですよね．わかったつもりになってしまう．．．

たぶん，そこらへんに僕が理系を選んだ理由がありそうだし，いま神経科学をやっている理由がある気がします．

ところで，吉本さんは思想家には珍しく理系（化学）の出身ですね．

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番組の終わり，進行役の糸井重里が「吉本さんは芸術は無価値であることを言った」，「この芸術論を人間論と言いかえても良さそうだ」とまとめていたけど，僕もそうだと思います．でも，世界が本当にそうかは知らないし，どうやって確かめたらいいかもわからんです．



※
労働価値は労働した分だけその商品やサービスに価値があるということだけれども，芸術は何度も推敲して時間をかけた作品よりも，即興的に作り上げた作品が明らかにすばらしい（価値がある）場合が往々にしてある，ということを言っている．