2010年11月2日火曜日

科学的根拠はありません.

※下記,単なる思いつきと思いつきの比喩表現です.科学的根拠はありません.

もう11月ですね.ここ2,3ヶ月は,ずっと,いろいろと終わらなくて泣きたい気分です.もちろん,終わらせた事も多々ありますが,それに対しての充実感がないというか...

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科学リテラシーという言葉がありますあるそうです.自分のいる分野だと神経神話というが流行っているらしく,なおさらリテラシーが必要だとか.

リテラシーは主には情報の受信者側についての問題として語られているんですが,神経神話に関しては,情報の発信者に対しての批判も大きいようです.いろんなところで神経神話に警鈴を鳴らし続けている方々もいます.

警鈴をならす事自体は,良いと思うんです.ただ,鈴の音が後ろ向きというか,他人をよせつけないような排他的な音色に聞こえてしまうのは僕だけかな!? 個人的には,生理学を中心とする今の日本の神経科学業界は,かなり閉鎖的だなぁと感じているので,その印象と重なってしまいます.

やるならば,「まちがったことを言っちゃいけない」,「正確に言え」と言うのではなく,「本当はこうですよ」「こう表現するのが正確ですよ」と後からいちいち訂正してあげるのが,良い方法だと思うんです.やるならば.

「科学的根拠を宣伝文句にする商品には文献情報をつける」といった提案はちょっと勘弁して欲しいなぁ.あーしなさい,こーしなさい,と言われる社会はかなりイヤだ.殺生するな(主に人間に対して)とか最低限の「してはいけない事」をみんなできめたら,あとは勝手にしたら良いと思うんです.

あと,情報を発信する側の「倫理」や受信する側の「教養」の問題で,手続き(制度)に還元して解決するのはまちがいじゃないかな.倫理や教養を育てるのは,やはり基礎教育の問題で,長い時間をかけて解決する問題ではないでしょうか.

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Webが,正確な情報が1つ増えるために万のクズ情報が飛び交う場だとしても,僕はWebを歓迎します.

というか,そもそも,正確な情報が1つが生まれるためには,万のクズ情報が必要なんだと思うんです.新しい情報ほど,まわりにクズ情報がびっしり張り付いているもんだと思うんです.そのうち,みんなでクズ情報を洗い流して,誰でもその正確な情報にたどり着けるようになる,というのが,情報が流通する構造ではないでしょうか.発信する事自体が目的である場合も多々あるし,その場合は内容なんてどうでもいいわけです.多かれ少なかれ,みんなそういう内容の無いコミュニケーションを必要としているでしょ.僕の雑談のほとんどは3分記憶する価値もないクズ情報.

基本的には,現象を理解するにはたいていは背景となる知識が必要で,ジャーゴン(術語)を使わないなら,それらを全部説明しなくちゃいけない.発信する側にそれを求めるのは,無理でしょう.専門家は黙るしかなくなっちゃう.

それよりは,とにかく何かを発信して,何かを受信する事が重要です.そのうち,専門家と専門家でない人達の間に新しい言語を作られるでしょう.それがコミュニケーションだと思います.一般に使われる新しい言語が,専門家コミュニティと違うからって,専門家はひがんじゃいけないw.コミュニティが違うんですから.フランス語より英語の方が正しい,とかはないのと同じだと思います.

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僕の個人的な体験では,初対面の人でも,自分が脳とか認知科学を研究していると伝えると,相手から脳の話題を切り出してくれることが頻繁にあります.僕はその人の知っている間違いを起点にして,(たぶん)正解に誘導してあげられる.話しが盛り上がる.「脳って何? 難しい事やってるんですね...」で終わってしまって何にも起点がないと,それを探すのにとても時間がかかりますよね.そういう点では,ちまたで活躍される脳科学者の恩恵を受けてます.

ということで,TVでの脳科学者のお話しであろうが,学会での神経科学者の講演であろうが,居酒屋での酔っぱらいの与太話であろうが,脳の話しをしてくれる事に当事者として歓迎します.

PS.
こういう問題に興味のある方は,この本,必読では.ある生物に関する科学的な報告書.
「鼻行類—新しく発見された哺乳類の構造と生活」Harard Stumpke 著, 日高 敏隆, 羽田 節子 訳. 動物学者でケンイある日高さんの訳本です.

追記: 2010 Dec. 7
弁護士の方(この人は科学と法律の関係の研究もしているらしい)と話したら,法律に関わる人は強かだと.裁判で勝つためなら,科学的ではないと知っていても,巷で科学らしき事と認識されていたら,それはどん欲に利用すると.うーむ,どうなんでしょう.この方は,これ以上の意見を言われたわけではありませんが,悪用される事を制限するために情報発信の手続きを面倒にするのはちがうかなぁと.やはり悪用されている事を防げばいいわけで.