2009年2月25日水曜日
ヒトヤマ,フタヤマ.
僕は,大学院生,社会人の教育プロジェクトに関わっているわけですが,年度下半期は課題解決実習として,履修生は1つのテーマで研究作業を5ヶ月ほど行います.大学院生,社会人ですのでそれぞれの都合にあわせて1ヶ月1,2度研究室に来て作業.来られた日はだいたい10時から17時まで実習です.来た時に作業できるように準備したり,作業途中の息抜きのために論文紹介をしたりしています.
今週は偶然にも日曜日から入れ替わり立ち替わりで4人の方が来て,今日まで4日間連続で実習.先週は,今回でほぼ完成にたどりついてもらうために,ここまでの作業と完成までの溝を埋めるべく事前に準備作業も.以外に大きな溝があったり..さすがに疲れました.
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実習テーマはこちらが与えていて,自分自身のためにも,僕にも慣れない研究道具が使われるテーマにしてます.おかげで実習前にはそれなりに準備にも時間がかかるのですけどねぇ.
実習のテーマは2つで,眼球運動の計測とシミュレーションでの検証,眼球運動モデルを駆動カメラに実装,です.
1つ目のテーマでは,
これまで実験環境はC/C++というプログラム言語で構築していたのですが,MatlabのtoolboxであるPsychtoolboxを使ってみることに.解析などはMatlabを使っているので,実験環境もMatlabにできれば統一できて便利かなぁと(Matlabそれ自体は(品よく言えば)高価なんですけど,いろいろとフリーのtoolboxがそろっているので離れられない).今いる研究室では以前からPsychtoolboxを使っているし,長年にわたって視覚眼球運動実験をしてきた研究者がいるので,教えてもらいながら試行錯誤.正直なところ心理物理実験に関しては十分に訓練を受けてないので,今更ながら些細な,それでいて重要な手技が身にしみていってる感じです.
2つ目のテーマでは,
SimulinkというMatlabに付属した!?シミュレーター環境で作成した眼球運動モデルの通りにカメラを動かそうというもの.SimulinkとハードウェアであるカメラはLabviewというソフトウェアを使ってつなぎます.LabviewはSimulinkを簡単に読み込んでくれるので,ハードウェアとのインターフェースとして使えるように環境を整えています.ここも基本的な作業はMatlab環境で統一しようと目論んでいるわけです.それで,簡単とはいえ,やはり初めてだと試行錯誤が必要.こちらは,大学院生であるOくんが地道に作業してくれて,昨日ひとまず動くようにしてくれた.細かいところは直さなくてはいけませんが,ここまでの8割はOくんの貢献.これには感謝.予定通りの目標までたどり着きそうです.
いまのところ,眼球運動モデルにしたがってカメラが動くだけですが,来年度はカメラの画像処理も加えて,視覚モデル(Ittiらの注意のモデルとか)も実装できるかなと考えています.視覚と眼球運動の両方のモデルを駆動カメラに実装.そういう環境を整えておけば,新しいモデルを作った時に,すぐにおもしろいデモンストレーションができそうです.
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半年の実習だけでは,研究として「新しい事」までにはたどり着かないのですが,有意義な研究環境が構築されているように思います.数学や理論研究以外は研究環境を構築するのも時間をとられる作業です.3月14日に実習の発表があり,もうヒトヤマくらいありそうです.
個人的なことでもヒトヤマあるのでヤマ2つ.
並行して,自分の研究も頑張らなければ.
がんばります!
っと気合いを入れてみる.
複数のWindowをスッキリと区画するソフト
MaxTo
PCで何かを参照しながら文章を書いたりする時に,2つのWindowを半分づつくらいにして両方が見られるようにしてます.これを使うと,Windowを最大化するときの大きさを任意に決められるので便利.2つのWindowに妙な隙間があったりせず,ぴったり感があって気分がスッキリです.
3分割してみたり.
これで最大化のボタンを押したり,タイトルバーをダブルクリックで最大化すれば,そのエリアで決めたサイズになる.Shiftを押しながら最大化すれば,画面いっぱいのサイズ(普通の最大化).区画はMainとAleternateの2種類つくれて,Altを押しながら最大化すれば別の区画の仕方で最大化できます.
Windows用のソフトです.
2009年2月21日土曜日
Formula one
Sneaky peek of the Red Bull RB5
F1に興味があるわけではないけれど,かっこえぇなー.
変形したり,パワーアップしたりのアニメーションがかっこいいなー.
パワーアップするシステムのトコは,
「ブレーキングとか生み出されているエネルギーが使われない時に
エネルギーをバッテリーに充電し,
バッテリーがフル充電されたあと,
スイッチを押すと6.5秒の間82馬力パワーアップ!」
(という主旨のことを言っていたと思う,たぶん)
2009年2月20日金曜日
シバフ
created by imkw
Green Island「大きな企業が実施するような、木を植えたり、井戸を掘ったりは
僕たちには出来ませんが、想像することは出来ます。
少なくともそのイメージを喚起させる事が出来れば幸いです。」
実行する前に,まず語る,というコンセプト.
もしくは,自分ができなくても,みんなに語る,というコンセプト.
【論文】復号化技術により低次視覚野の作業記憶の内容を明らかにする.
Decoding reveals the contents of visual working memory in early visual areas,
Stephenie A. Harrison & Frank Tong.
Nature , doi:10.1038/nature07832; Published online 18 February 2009
低次視覚野に作業記憶がある,という論文.うーん,率直なところ論文を読んでも半信半疑.
タスクは,被験者は2つのナナメ縞を見せて,キューに従ってどちらかを記憶させます.ナナメ縞を2つ出してキューが出終わるまでが2秒,そこから記憶しておく時間が11秒間(Figure. 1).記憶期間の低次視覚野のデータから,どちらのナナメ縞かを識別できています(Figure. 2).
それで,被験者が記憶期間後半の脳活動を使っても識別率が低下せず(Figure.3),さらに対照実験として被験者がナナメ縞を記憶をする必要のない課題をやらせたら,その時は識別できなかった( Supplementary Figure. 5 )という結果が得られています.このことから,低次視覚野が
<追記> ということで,これは一時記憶の効果でもなさそうということですね.
また,ナナメ縞を想像(予測)して下さい,という課題もやっていて,それも識別率がチャンスレベルと有意な差になっていない(Supplementary Figure. 6).視覚刺激の入力がないとダメのようです.つまり,メインのタスク(記憶課題)で識別できているのは,長期記憶ではなく,
実験設定など,vikingさんの脳賦活の復号化(decoding)によって明らかにされた視覚野におけるワーキングメモリの内容:decoderは心のうちに思い描いたことまで読み取れるのか? が詳しいので,僕はサボります.そちらを読んでみてください.
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最初,Supplementaryのほうを読まずにいたので(本文にも文章で書いてあるのですが,よく理解していなかった),血流変化が15秒くらいつづくことを考えると,一度情報が乗ってしまった血流が15秒くらい情報を保持している可能性は十分にあるのでは??と思っていました.Supplementary Figure. 5の結果をみて,それなりに納得.記憶課題では,低次視覚野が情報を保持していて,その発火活動による血流の増加があるはずなので,その効果で識別を可能にしているのでしょう(記憶課題でピーク後の血流低下は遅いということは確認されているのだろうか).
fMRI信号が入力を表現していること考えると,うーん,いろいろ妄想される...
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脳内での情報の有無を検証するために復号化を手段として使うやり方は,僕もやってみたいと思う方法です.ただ,再構成ではなく,この論文のように識別しているだけだと,識別だけでは,ナナメ縞を識別できる何らかの情報,と言っているだけで少し弱い証拠です.「何らかの情報」が全く関係ない,刺激とたまたま同期した情報だったりすることもあるわけです.なので,識別課題だと関係ない情報は含まれいない事を説明しなくてはいけない.この論文では眼球運動の影響がないことの説明(言い訳)が必要になってしまいます.
Miyawaki, Uchida, et al.(2008)のように再構成しているならば,仮に関係ない情報が入っていても結果から目に見えて確認できますし.再構成できれば,得られた情報が脳内にあることの十分条件です.
とはいえ,この論文,復号化技術を神経科学の方法論にした点では,初めての論文ということになるのでしょうか.これでNatureに載ってしまうのは甘い気がしますが.
<追記>
+ 感覚記憶,Sensory memory.
+ 一時記憶(短期記憶),Short-term memory,cf. Miller, G. A., The Magical Number Seven, Plus or Minus Two : Some limits on our capacity for processing information, Psychological Review, 63, 1956.
- 作業記憶,Working memory,cf. Baddeley, A. D., Working Memory, 1986.
+ 長期記憶,Long-term memory.
+宣言的記憶,Declartive memory.
- 意味記憶,Semantic memory.
- エピソード記憶,Episodic memory.
+ 手続き記憶,Procedural memory.
上記,「作業記憶は目的のために記憶される」,ということで一時記憶と分けた.記憶機能に関する用語・概念で,認知科学とか心理学で考えられたのか.これらの概念で脳の機能を的確に表現できるかは知らんが,とりあえずメモ.
セカイカメラ
世界をクリッカブルにするオープンプラットフォーム──「セカイカメラ」
すげーなぁ.
つい数日前に,電脳コイル(Wikipedia)というアニメを知ったのだけど,電脳メガネのiPhone版.
大学で哲学を専攻していたヒトが作っちゃえるのだから,技術をつくる技術も発達したもんだ.
でも,一度セカイカメラを使ってしまったら,使ってない時にも「タグ」が想像されて,風景がうるさく見えそうな気がする.
2009年2月18日水曜日
2009年2月17日火曜日
サッカー批評
表紙を見たとき,おっと思った.たぶん僕より上の年代で,サッカーを見ていた人にはデジャビュなはず.
僕が中学生だった頃に,あとからドーハの悲劇と呼ばれる試合で負けて,うなだれたラモス瑠偉がこの表紙と同じだった.あの頃は,うなだれたラモスの写真をたくさん目にしたし,その後もことある毎に目にしたので記憶に残っています.表紙をめくると中に,そのラモス瑠偉の写真が出ています.
この雑誌はサッカーの雑誌で,年に4回だけ発行される季刊誌.創刊号の頃から表紙が好きで,一時期僕には内容ともどもおもしろくなかったのだけど,最近また内容もおもしろくなって表紙も好きなのが続いています.
スポーツの雑誌は往々にして試合の寸評が記事だし,表面をなぞった結果論が多く,その内容が正しいのか判断する材料を挙げてくれないので,あぁそうですか,という感じ.この雑誌は,テーマにそっていろいろな角度からの記事があるので,記事がどういう文脈で書かれているのか,その根拠も比較的理解できます.あるチームが試合で勝つまでに至る過程が,クラブの財政だとか,運営だとか,行政や地域との連携だとか,子供達の育成だとか,メディアだとか,もちろん試合での戦術なども網羅的に記事になっているのでおもしろいです.おかげで読むのに時間かかりますけどね.ちょろっとした時間に読むときは,山崎浩一の「ぼくらはへなちょこフーリガン」とかインタビュー記事とか.
ところで,少し前までの日本には職業としてのサッカー選手は数えるほどだったわけで,職業ではなかった仕事が職業になる,というのを僕はおもしろく見ています.サッカーを職業として成立させるための仕掛けとか組織とか,サッカー選手を職業にした派生でその他にもいろいろな仕事が職業になっている様子を見るのはおもしろいし,参考になります.長くサッカーを続けていたおかげか,接点のある人が選手やスタッフとして働いていたり,小さなクラブが地域リーグからJリーグへとあがっていく様子も比較的近くで見られたので実感になっています.この雑誌はいろんな職業の人が登場するので,その点でもおもしろいです.科学もたくさんの仕事から成り立っているのだけど,職業になってもいい仕事がまだ結構あるように思いますね.
ちなみに紹介している号は12月に発売されているのですが,まだ書店にあったので今日買った.
2009年2月13日金曜日
知り合いの論文
Social distance evaluation in human parietal cortex (Yamakawa Y, Kanai R, Matsumura M, Naito E, PLoS ONE. 2009;4(2))
人間関係の心理的距離(好きだとか嫌いだとか←正確には違います)とその人との身体的距離(物理的距離)について,いろいろな点で同じだったという話.顔写真をはった人形を使っての心理物理実験とfMRI計測実験してます.心理的距離と物理的距離が相関していて,両方の距離が頭頂の同じ場所に表象されているという結果.まだちゃんと読んでいないのですけど.
著者の方を知っていて,論文が出るまでの紆余曲折を聞いていたんで,今日の朝に出ているのを発見してうれしくなってしまった.
何かの時に著者の方と話をした後に,「持ち歩いてんだよ」と鞄の中から実験で使われている人形セットが(笑)被験者として実験をやりました.でも,僕は,この論文の主張に沿うようなイイ被験者じゃなかったんですよねw.嫌いな人も好きな人もまんべんなく自分の周りに並べたんで.
人間関係の心理的距離(好きだとか嫌いだとか←正確には違います)とその人との身体的距離(物理的距離)について,いろいろな点で同じだったという話.顔写真をはった人形を使っての心理物理実験とfMRI計測実験してます.心理的距離と物理的距離が相関していて,両方の距離が頭頂の同じ場所に表象されているという結果.まだちゃんと読んでいないのですけど.
著者の方を知っていて,論文が出るまでの紆余曲折を聞いていたんで,今日の朝に出ているのを発見してうれしくなってしまった.
何かの時に著者の方と話をした後に,「持ち歩いてんだよ」と鞄の中から実験で使われている人形セットが(笑)被験者として実験をやりました.でも,僕は,この論文の主張に沿うようなイイ被験者じゃなかったんですよねw.嫌いな人も好きな人もまんべんなく自分の周りに並べたんで.
2009年2月11日水曜日
【論文】マカクザルの脳活動から予測したヒトの側頭葉前部の顔選択的活動部位
An anterior temporal face patch in human cortex, predicted by macaque maps,
Rajimehr R, Young JC, Tootell RB,
Proc Natl Acad Sci U S A. 2009 Jan 28
側頭葉に顔に選択的に活動する部位があり,nonhuman primates(nhp)の研究では,側頭葉の前(anterior temporal face patch, ATFP)と後ろ(posterior temporal face patch, PTFP)の2つに顔選択的な部位があったのですが,ヒトではFFA(fusiform face area)が知られているだけでした.このFFAはnhpでの後ろ側であるPTFPに対応するのだろうと思われていますが,では前側のATFPに対応するヒトの脳部位を同定しようというのがこの論文の主題.マカクザルとヒトで同じタスクを用いたfMRI計測をおこなって,脳の対応関係をみたところ,ヒトでもATFPに対応する部位が予測できたということです(Fig.4.).
側頭葉の前側は,最近のPET研究では有名人やよく見る顔で活動することが報告されているのですが,fMRI研究などでは見逃されていることも多い.その1つ目の理由は,側頭葉の前側が担っているのは顔認知の周辺的な情報だからだろうと.ここは有名人や近しい人の顔を見たときに活動する部位で,社会的な関係(特徴)の情報を持っているのではと言われているようです.2つ目は,fMRI計測ではSNが悪いところで有意な活動が出にくいんだとか.この部位はだいたい耳の横にあるのですけど,脳と骨の間の空洞が大きい部分なのでSN比が悪い(Fig.S7).
頭頂葉の顔選択部位(parietal face patch, PFP),前頭葉の顔選択的部位(frontal face patch, FFP)の対応も少し議論されています.前頭葉にあるFFPは,ヒトではPCG(precenral gyrus)なのではないかと.
この論文の論旨とは関係ない感想なのですが,FFAは精通している視覚刺激に選択的(たとえば,羊飼いは羊を見てもFFAが活動する)とも言われているのですが,僕もそうなんだろうと思っています.普通の物を見るアルゴリズムとどこが違うのかなぁという疑問がいつもおもうところで,最適性の程度が違うのかなと思っています.あと,他の部位と相互結合があって視覚以外の付加的な情報と関連づけられているのが,この部位なのかなと妄想しています.
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ヒト10人とサル2頭でfMRI計測しています.タスクは顔(集合写真のようなたくさんの顔が写っている画像)と場所(室内の画像)を使って,被験者は固視点から目を動かさずに画像を受動的に見ているだけ.ちなみに,集合写真を見せた方が顔に選択的な活動を検出されやすいみたいです.もう一つ,顔(1人の顔)と物を見せるタスクもやっていて,Fig.5でその結果を見せています.
脳活動の解析では,ヒトとサルの脳活動の対応をとることが目的なのと,上記でも書いたようにATFPは普通に解析したのでは有意な活動が見えにくいので,統計的に有意に出やすいように大きめの範囲で平均を取ってから検定にかけています.
FIg.1.
A,B.monkey Jとmonkey Rの脳活動.赤-黄色が顔選択的に活動している部位,シアン-青が場所選択的に活動している部位.左下が後頭葉で,右に行くと側頭葉,上に行くと頭頂葉から前頭葉.Cはmonkey Jの前頭葉を横から見た図(上が右脳,下が左脳).
Fig.2.
ヒトの個人毎の脳活動,4人分.
Fig.3.
ヒトの被験者10人の平均脳活動.解析で有意な活動が出やすくなっているので,一般的な解析より側頭葉の下が広く活動しています.
Fig.4.
サルとヒトの脳活動の対応をとった結果です.対応の取り方は,Caretというソフトウェアを使っているようです.アルゴリズムとしては,脳の溝で主要な部分を対応点として,サルとヒトのそれぞれの脳を中間的な脳の形に変形させています(cf.The visual neuroscience のOrganization of visual areas in macaque and human cerebral cortex. David C. Van Essen(PDF)の章,Fig6を見るとわかりやすいです.ちなみにこの本,手元にあるのですけど,このページは白黒なんですよね.pdfで見るとカラーになっているので,そっちの方が見やすいです.).
Aがサルの脳活動,Bがヒトのアトラスにのせたサルの脳活動,Cがフラットな脳の図にのせたヒトの脳活動,Dはヒトの脳活動.赤矢印がPTFAもしくはFFA,緑矢印がATFA,青矢印がFFP.
サル,ヒト共に3カ所活動しているのがわかります.
Fig.5.
顔と物のタスクでの脳活動.A-Eがヒト,Fがサルの結果.これでも側頭葉の前と後ろで活動しているのがわかります.
2009年2月5日木曜日
TVを見て,節分は結構盛り上がる行事だったのねと再認識した.
「京大広報」を眺めていたら,京大の情報学研究科は去年の暮れが創立10年だったとか.情報学って思ったより若い.
僕は20代最後の1年です.
今日は実習.
2009年2月4日水曜日
Evernote
メモをとったり,アイデアを練るのに紙copiを使っていたけれど,Evernoteに乗り換えるようかな.紙copiNetは,ファイルをダウンロードしてバックアップをとれないのが難点.
・紙Copiを使ってた理由がEvernoteにも備わっている.
ノートを選択してすぐに書き出せる.
最初の一行目をタイトルにしてくれる.
保存も気にしなくて良い.
Serverとの同期は意識的にやった方がよさそうだけど.それでも定期的に同期してくれる.
・太字,斜体,箇条書きだの視認性がよくなる編集ツールが一通りある.
表はMacだけか!?
・印刷設定からPDFとして保存も出来る.
Macなら標準で出来るし,WindowosでもPDF作成ソフトがあればできる.エクスポートすると*.enexというオリジナルのファイル形式なのだけど,実質PDFに保存できるので,レジュメとか研究資料作成にも便利.
Notebook毎に保存先をLocal onlyに変更することが可能研究のメモにも使える.
基本的には,メモはServerに保存されるのだけど,自分のPCだけに保存することも出来る.ただし,Notebookを新規作成する時のみに設定可能.
・図の貼り付けも簡単.(個人的にはこれが一番嬉しい)
JPEGファイルもドラッグ&ドロップで貼り付けられるし,Matlabで作ったFigureをAlt+Printscreenでコピーして貼り付けるのも出来る.これが,Wikiのようにファイルをエクスプローラから選択して,アップロードして,..とかになるとけっこう面倒.
論文とか原稿にする図はちゃんとepsファイルとして保存しているのだけれど,普段簡単に見るのには不便でした.これまではepsと簡易プレビュー用にpngの2つのファイルを作っていて,めんどくさかった.なにより,図にコメントをつけておけないので,後で見てもわからないことも.
最近はパワーポイントにAlt+Printscreenで図をコピーしてはりつけて,メモをとっていたけど,Evernoteで同じ事ができる.Evernoteは,ファイル管理しやすいので,こちらに軍配.
・ToDoリストが便利かもしれない.
各ノートにチェックボックスをいれられる.
それでもって,AttributesのContainsを開くとにTo-do items,Unfinished To-do items,Finished To-do itemsがあって,チェックボックスが記載されているノートを一覧表示してくれる.
Unfinished To-do itemsをクリックすれば,各ノートにバラバラにTo-doを書いておいても,見忘れたりしないかもしれない.
・その他
・Webアプリもあるけれど,普段はクライアントアプリを起動して同期をとる方が使いやすい.クライアントアプリをインストールしておけば,オフラインでも使用できるし.
・起動が速い.
・Webをクリップしておく人には,そちらでも使い道がある.
・一応,月にアップロードできる容量は決められている.
不便なのは,
・日本語を編集時に,他のアプリケーションでは変換中に出てくる下線がないので,混乱する.
・Windowsのインターフェースにもうちょい自由度があれば.Macでは使える3カラム表示がほしい.
Creative Commons
基本的に物はすべて共有物だと思っています.今回は著作物だけの話しですけど,本とか音楽とか著作物に価格がついてしまうのは副次的に著作物の価値ともとれますが,第一義には市場に流通させる手段です.みんなに知れ渡った方が共有財産としての著作物に価値がうまれるからです(別に著作物に限らず,市場経済ってそういうものだと思います).著作者が著作物に時間をかけていて,著作者も生活者なので,生活できる程度に著作権ってのをつくって保護しましょうってことですよね.
で,コピー技術のおかげで潤っている業界ありますね.一部の人達は過剰に収入を得ている気がするんですよね.特に,音楽とか映画とか.著作者本人よりも著作物を管理している人達が盛んに著作権を叫んでいるような業界.そんな人達はYoutubeなんかは目の敵なわけですが,...
角川が共有サイトの「違法アニメ」を収益化 基準満たせば「公認」
角川,強かです.こういう強かさは好きだな.相手を制約することなく,相手を利用してやるっていう強かさ.イギリスのコメディ番組もこんなメッセージとともにYoutubeにチャンネルをもつようになったみたいです.
「(途中略)
君らが投稿していたクソみたいな品質の動画のことは忘れたまえ。代わりに、我々が本物を提供する。コレクションの中から高品質な動画を直接お届けする。
そして、人気のある動画をどんどん新しい高品質バージョンに置き換えていく。もちろんすべて無料で提供する。どうだ!
(以下略)」
モンティ・パイソン、YouTube上にて無料でコントを公開
2009年2月2日月曜日
モデル
Looking for cognition in the structure within the noise.
Johnson A, Fenton AA, Kentros C, Redish AD.
Trends Cogn Sci. 2009 Jan 7.
上の論文で,神経活動に関する研究が,符号化研究,復号化研究,生成モデル研究に分けらて,生成モデルを考えることが重要だとか.この方たちが言っている,符号化研究,復号化研究,生成モデル研究ってのをたたき台に自分が考えていることを整理.今回はこの論文の要約というわけではないので悪しからず.
まず実験では,感覚刺激,被験者・被験動物の行動,神経活動の3つが観測できる.
符号化研究では,感覚刺激もしくは行動と神経活動が,時間的に相関しているかを見ている.ウェスリー・C. サモンという人が,「統計的関連性を調べ,因果的説明を加えるという手続きをとること」が科学的説明だと言ったらしい.この言説の何が新しいかと言いうと,あたりまえに聞こえるけれど,因果的説明,つまり原因をつきとめることが科学だといったわけ.この手続きでいくと,符号化研究は統計的関連性を調べていることになる※2.相関を調べる研究はたくさん研究されているし,確かに相関がなければその先に研究のしようがないような気はする.大半のfMRI研究もこの類でしょう.
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復号化研究では,神経活動から感覚刺激もしくは行動が復号化する.復号化できたとすれば,その神経活動に少なくとも復号化できただけの情報量が存在することを示している(情報が存在することの十分条件になる).これは,符号化研究よりは情報が存在していることを強く言える.
復号化研究で課題となる技術を考えると,まず1つ目が,復号器(デコーダー)の作成.
電気生理学の分野だと神経細胞に刺激を与えて,例えば電気刺激をして活性化させたり,逆に冷却して鈍らせたりする.動物なので,直接神経細胞に刺激を与えることが出来て,ある領野の神経細胞を電気刺激したら,動物の眼球が実際に動いたりということが検証できる.つまり,脳に備わっているデコーダーをそのままに利用できるのでデコーダーを作成する必要がないのだけど,人の場合はそうもいかない.技術的,倫理的に問題があるから,ある領野に電気刺激をして見えた画像を報告してもらうわけにはいかない(TMSという方法はあるが,簡単のためその話しはどこかへ置いておく).なので,人で復号化研究をするならば,デコーダーを作成して,計測した神経活動から感覚刺激を再現しなくちゃいけない.めんどくさい.ただ,どんなイビツなデコーダーだとしても復号化さえできれば復号化できた程度には情報表現がそこにあることになるから,強力な武器だ.
で,仮にデコーダーがうまく作成できたとして,脳の情報表現の話しなので,情報表現がどんなモデルになっているか考えなくちゃいけない※3.視覚の表象がJPEG方式かどうかを研究するのは,JPEGモデルがなけりゃできない.ちなみにモデルを考えるときのヒントの1つは計算論.どんな最適性が必要で脳が計算しているか考える.画像を思い出すことに最適性をおけば
PCA(Principal Component Analysis,主成分分析)で,画像を区別することに最適性を置けばLDA(linear discriminant analysis,線形判別分析)だとか(←あくまで例え)そんなことを考える.もう1つは,脳というハードウェアの制約.つまりその表現をニューラルネットワークで表現できるかとか考える.ニューロンの発火特性などもヒントになるかもしれない.
そして,脳の情報表現モデルの仮説がたって,それを実験的に検証しようとする.例えば画像は形や色などなど高次元の情報を持つことになる.仮に脳の情報表現を知っていたとしても,それを検証実験するためには多変量解析が必要になる.動画なんてなったら,多変量に時間発展まで入ってくる.質点の動きだったら,位置,速さ,方向なんていう程度の次元ですんでいたが,大抵の情報は高次元だ.画像の情報表現が高次元であると同時に,とうぜん脳も集合的符号化(Population code)されているだろうから,高次元と高次元の情報の変換を考えなくちゃいけない.
(実際,デコーダー作成,情報表現のモデル作成,実験検証が順にできるわけでなく,各工程をいったりきたり試行錯誤するわけですけど.)
復号化するのは結構ハードルが高いと思うのだけど,復号化技術を使えば,統制のとれていない刺激をつかって,例えば散歩しながら脳活動を計れたとして,ある領野から散歩しているときに見える画像がデコードできればその領野では見ている画像が表現されていると言っていい.統制がとれていない刺激でも実験はできるのかなと思う※4.
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生成モデル...
Johonsonらは,符号化研究,復号化研究だけでなく,さらにある神経活動(情報)がどのように生成されるか,生成モデルを用いて予測すること(当然,「モデル」がなきゃ予測できない)が有用だと言ってます.ここで有用と言っているのは,この人達は,ニューロンに含まれるノイズをどのように扱うかという文脈で言っていて,一見するとノイズのように見えけど刺激を反映している信号は生成モデルを用いると区別できるでしょ,ということ言っています.この文脈でなくても,対象としている神経活動を活動を理解するためには低次からの入力や高次からのフィードバックなどなど回路(Network)を考える必要があるし,領野毎に独立に機能しているわけじゃないのは自明なのだから回路のモデルは必要.回路を考えなければ,環境との双方向的な機能は考えられないし.
もちろん,回路を調べることが難しいのはわかる.眼球運動の研究で閉回路系の実験は,フィードバックの実験統制をとるのが難しかったりするので,厳密性に欠けるとして嫌がる人もいるみたいですし.なので,やはり反射系など開回路系の方が研究しやすいといえば研究しやすい.開回路だと回路とはいっても回っていない回路.僕はその点はいい加減でも進める質なので,閉回路にしてある程度の実験統制で研究して,分かったことをもとに実験統制を強めていくということでもいいと思っています.徐々に囲みを小さくして精密さを高めていくというか,らせん階段状に発展していくというか,そんな感じでも良いと.
脱線しましたが,Johonsonらは生成モデルを使って,予測することで科学的検証を試みようということのようですが,予測は科学的検証になるのですかね※5?演繹で話しを進めていくことが科学ゲームのルールだと思っいます※6.サッカーで手を使っちゃいけないくらい根本的なルールかなと,例外はキーパーくらいで.なので,「このモデルだ」って言いたければ適当に対立するモデルを持ってきて仮説検定をする以外には示しようがない.本当はモデルは無限に考えられて,無限個のモデルと比較するのは無理だから,考えられる範囲のモデルと比較して進んでいくしかないと思っているのですが,どうなんでしょう.
以前,思いつき的にデータ同化が良いんじゃないか!?と書いたことがあったのですが,今では,あの時直感したほど有用ではないなぁという気がしています.データを逐次更新して,モデルパラメータをフィッティングしていくだけかなと.ただ,短期と長期のトレンドがあるようなダイナミクスを持つモデルの場合,データ同化で逐次更新していき,後から実験では観測できないパラメータの時系列を観察したら新しいことが分かるかもしれない,というような使い方はできるかと思っています.
どうまとめていいか分からなくなってきたのですが,冒頭の論文の生成モデルのくだりはアタリマエのことなんじゃないかと思う,という結論.アタリマエでも,やっている人は多くはないと思いますけどね.それと,神経科学において,全脳計測実験技術(fMRIとか多細胞計測とか)と情報学的素養(多変量解析とか確率的な制御回路理論とか)は使えるので,使います,と自分の研究方針を確認して,おわり.
あ,あと,前にも書いたけど,やはり脳という対象は方法論とかいろいろ考えなくちゃいけないから,おもしろいと思う.
※1.
何が科学的説明かってのは難しい.
カール・ヘンペル(Carl Gustav Hempel)らは演繹的法則的モデル(DNモデル,被服法則モデル)という科学的説明のモデルを提案したのだけど,2つの事象は無関係なのに論理的に正しければ科学的説明となったり,明らかにおかしい点がいくつかある.
※2
ホントは,相関しか調べてない,という事を強調したい.
※3
神経活動の生成モデルは,言ってみればネットワークのモデルが必要だと言っているのだと思うのだけれど,モデルはネットワークのモデルだけでなくて,情報表現自体のモデルだって必要だ.モデルは到るところの水準で必要で,これまでの研究だって,モデルと言えないほど簡単な情報表現のモデルだから,自然言語ですまされきただけだと思っている.
例えば,質点の動きだけなら,古典物理で扱われている位置,速さ,方向(速さと方向を合わせたら速度)という表現が,世界を表現するに(たぶん)最適な表現になっていて,脳でもそういう表現があるかといわれたら,位置,速度が発火率で表現されていることが知られている.脳も古典物理で使われる表現で表象されていそうってことがわかる.方向に相関のある神経活動なんかもたくさん調べられてきた.位置,速さ,方向も動きの情報表現のモデル.アタリマエで単純なだけでモデルは必要だったわけ.一方で画像の表現についてはいくつも考えられるし,数理的に単純じゃないので理論家が必要になったり,モデルが意識される.
視覚認知に比べると,地味なのだけれど眼球運動研究では神経回路モデルが古くから考えられていたし,実験検証できる範囲でモデルの検証はされてきている.ここで生成モデルとことさらいうことのほどなのだろうか.
※4
ただ,刺激に関係する領野がどこであるかまでを同時に探すのは結構大変な気がする.散歩しているときには様々な刺激が同時に入力されるわけで,刺激同士にも相関があって,複数の領野が同期的に活動しているのだろうから,根本的に分離できないことが大半だと思う.情報表現モデルの検証をするのに,デコーダー作成,領野探索が同時に入ってきては,まぁ,不可能かなぁ.ある程度,特定の領野に特定の情報が存在することがわかっているときだけなら.
※5
予測モデル(予測に最適なモデル)は生成モデル(真のモデル)に一致しないのですが...
※6
「仮説Hが正しいならばPである.実験結果はPであるからHである.」
これは間違った演繹であり,帰納が含まれているので,このような形で検証できない.
「仮説HならばPである.PではないのでHではない.」
こちらが正しい演繹.仮説検定.
cf.
「仮説検定型」(hypothesis-driven)研究の是非:Yes/Noが言えれば全ては丸く収まるのか
@ 大脳洋航海記
cf.
「ノイズ」の中の脳機能 @ The Swingy Brain
ビジョン,デビッド・マー著
科学哲学の冒険,戸田山和久著
Johnson A, Fenton AA, Kentros C, Redish AD.
Trends Cogn Sci. 2009 Jan 7.
上の論文で,神経活動に関する研究が,符号化研究,復号化研究,生成モデル研究に分けらて,生成モデルを考えることが重要だとか.この方たちが言っている,符号化研究,復号化研究,生成モデル研究ってのをたたき台に自分が考えていることを整理.今回はこの論文の要約というわけではないので悪しからず.
まず実験では,感覚刺激,被験者・被験動物の行動,神経活動の3つが観測できる.
符号化研究では,感覚刺激もしくは行動と神経活動が,時間的に相関しているかを見ている.ウェスリー・C. サモンという人が,「統計的関連性を調べ,因果的説明を加えるという手続きをとること」が科学的説明だと言ったらしい.この言説の何が新しいかと言いうと,あたりまえに聞こえるけれど,因果的説明,つまり原因をつきとめることが科学だといったわけ.この手続きでいくと,符号化研究は統計的関連性を調べていることになる※2.相関を調べる研究はたくさん研究されているし,確かに相関がなければその先に研究のしようがないような気はする.大半のfMRI研究もこの類でしょう.
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復号化研究では,神経活動から感覚刺激もしくは行動が復号化する.復号化できたとすれば,その神経活動に少なくとも復号化できただけの情報量が存在することを示している(情報が存在することの十分条件になる).これは,符号化研究よりは情報が存在していることを強く言える.
復号化研究で課題となる技術を考えると,まず1つ目が,復号器(デコーダー)の作成.
電気生理学の分野だと神経細胞に刺激を与えて,例えば電気刺激をして活性化させたり,逆に冷却して鈍らせたりする.動物なので,直接神経細胞に刺激を与えることが出来て,ある領野の神経細胞を電気刺激したら,動物の眼球が実際に動いたりということが検証できる.つまり,脳に備わっているデコーダーをそのままに利用できるのでデコーダーを作成する必要がないのだけど,人の場合はそうもいかない.技術的,倫理的に問題があるから,ある領野に電気刺激をして見えた画像を報告してもらうわけにはいかない(TMSという方法はあるが,簡単のためその話しはどこかへ置いておく).なので,人で復号化研究をするならば,デコーダーを作成して,計測した神経活動から感覚刺激を再現しなくちゃいけない.めんどくさい.ただ,どんなイビツなデコーダーだとしても復号化さえできれば復号化できた程度には情報表現がそこにあることになるから,強力な武器だ.
で,仮にデコーダーがうまく作成できたとして,脳の情報表現の話しなので,情報表現がどんなモデルになっているか考えなくちゃいけない※3.視覚の表象がJPEG方式かどうかを研究するのは,JPEGモデルがなけりゃできない.ちなみにモデルを考えるときのヒントの1つは計算論.どんな最適性が必要で脳が計算しているか考える.画像を思い出すことに最適性をおけば
PCA(Principal Component Analysis,主成分分析)で,画像を区別することに最適性を置けばLDA(linear discriminant analysis,線形判別分析)だとか(←あくまで例え)そんなことを考える.もう1つは,脳というハードウェアの制約.つまりその表現をニューラルネットワークで表現できるかとか考える.ニューロンの発火特性などもヒントになるかもしれない.
そして,脳の情報表現モデルの仮説がたって,それを実験的に検証しようとする.例えば画像は形や色などなど高次元の情報を持つことになる.仮に脳の情報表現を知っていたとしても,それを検証実験するためには多変量解析が必要になる.動画なんてなったら,多変量に時間発展まで入ってくる.質点の動きだったら,位置,速さ,方向なんていう程度の次元ですんでいたが,大抵の情報は高次元だ.画像の情報表現が高次元であると同時に,とうぜん脳も集合的符号化(Population code)されているだろうから,高次元と高次元の情報の変換を考えなくちゃいけない.
(実際,デコーダー作成,情報表現のモデル作成,実験検証が順にできるわけでなく,各工程をいったりきたり試行錯誤するわけですけど.)
復号化するのは結構ハードルが高いと思うのだけど,復号化技術を使えば,統制のとれていない刺激をつかって,例えば散歩しながら脳活動を計れたとして,ある領野から散歩しているときに見える画像がデコードできればその領野では見ている画像が表現されていると言っていい.統制がとれていない刺激でも実験はできるのかなと思う※4.
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生成モデル...
Johonsonらは,符号化研究,復号化研究だけでなく,さらにある神経活動(情報)がどのように生成されるか,生成モデルを用いて予測すること(当然,「モデル」がなきゃ予測できない)が有用だと言ってます.ここで有用と言っているのは,この人達は,ニューロンに含まれるノイズをどのように扱うかという文脈で言っていて,一見するとノイズのように見えけど刺激を反映している信号は生成モデルを用いると区別できるでしょ,ということ言っています.この文脈でなくても,対象としている神経活動を活動を理解するためには低次からの入力や高次からのフィードバックなどなど回路(Network)を考える必要があるし,領野毎に独立に機能しているわけじゃないのは自明なのだから回路のモデルは必要.回路を考えなければ,環境との双方向的な機能は考えられないし.
もちろん,回路を調べることが難しいのはわかる.眼球運動の研究で閉回路系の実験は,フィードバックの実験統制をとるのが難しかったりするので,厳密性に欠けるとして嫌がる人もいるみたいですし.なので,やはり反射系など開回路系の方が研究しやすいといえば研究しやすい.開回路だと回路とはいっても回っていない回路.僕はその点はいい加減でも進める質なので,閉回路にしてある程度の実験統制で研究して,分かったことをもとに実験統制を強めていくということでもいいと思っています.徐々に囲みを小さくして精密さを高めていくというか,らせん階段状に発展していくというか,そんな感じでも良いと.
脱線しましたが,Johonsonらは生成モデルを使って,予測することで科学的検証を試みようということのようですが,予測は科学的検証になるのですかね※5?演繹で話しを進めていくことが科学ゲームのルールだと思っいます※6.サッカーで手を使っちゃいけないくらい根本的なルールかなと,例外はキーパーくらいで.なので,「このモデルだ」って言いたければ適当に対立するモデルを持ってきて仮説検定をする以外には示しようがない.本当はモデルは無限に考えられて,無限個のモデルと比較するのは無理だから,考えられる範囲のモデルと比較して進んでいくしかないと思っているのですが,どうなんでしょう.
以前,思いつき的にデータ同化が良いんじゃないか!?と書いたことがあったのですが,今では,あの時直感したほど有用ではないなぁという気がしています.データを逐次更新して,モデルパラメータをフィッティングしていくだけかなと.ただ,短期と長期のトレンドがあるようなダイナミクスを持つモデルの場合,データ同化で逐次更新していき,後から実験では観測できないパラメータの時系列を観察したら新しいことが分かるかもしれない,というような使い方はできるかと思っています.
どうまとめていいか分からなくなってきたのですが,冒頭の論文の生成モデルのくだりはアタリマエのことなんじゃないかと思う,という結論.アタリマエでも,やっている人は多くはないと思いますけどね.それと,神経科学において,全脳計測実験技術(fMRIとか多細胞計測とか)と情報学的素養(多変量解析とか確率的な制御回路理論とか)は使えるので,使います,と自分の研究方針を確認して,おわり.
あ,あと,前にも書いたけど,やはり脳という対象は方法論とかいろいろ考えなくちゃいけないから,おもしろいと思う.
※1.
何が科学的説明かってのは難しい.
カール・ヘンペル(Carl Gustav Hempel)らは演繹的法則的モデル(DNモデル,被服法則モデル)という科学的説明のモデルを提案したのだけど,2つの事象は無関係なのに論理的に正しければ科学的説明となったり,明らかにおかしい点がいくつかある.
※2
ホントは,相関しか調べてない,という事を強調したい.
※3
神経活動の生成モデルは,言ってみればネットワークのモデルが必要だと言っているのだと思うのだけれど,モデルはネットワークのモデルだけでなくて,情報表現自体のモデルだって必要だ.モデルは到るところの水準で必要で,これまでの研究だって,モデルと言えないほど簡単な情報表現のモデルだから,自然言語ですまされきただけだと思っている.
例えば,質点の動きだけなら,古典物理で扱われている位置,速さ,方向(速さと方向を合わせたら速度)という表現が,世界を表現するに(たぶん)最適な表現になっていて,脳でもそういう表現があるかといわれたら,位置,速度が発火率で表現されていることが知られている.脳も古典物理で使われる表現で表象されていそうってことがわかる.方向に相関のある神経活動なんかもたくさん調べられてきた.位置,速さ,方向も動きの情報表現のモデル.アタリマエで単純なだけでモデルは必要だったわけ.一方で画像の表現についてはいくつも考えられるし,数理的に単純じゃないので理論家が必要になったり,モデルが意識される.
視覚認知に比べると,地味なのだけれど眼球運動研究では神経回路モデルが古くから考えられていたし,実験検証できる範囲でモデルの検証はされてきている.ここで生成モデルとことさらいうことのほどなのだろうか.
※4
ただ,刺激に関係する領野がどこであるかまでを同時に探すのは結構大変な気がする.散歩しているときには様々な刺激が同時に入力されるわけで,刺激同士にも相関があって,複数の領野が同期的に活動しているのだろうから,根本的に分離できないことが大半だと思う.情報表現モデルの検証をするのに,デコーダー作成,領野探索が同時に入ってきては,まぁ,不可能かなぁ.ある程度,特定の領野に特定の情報が存在することがわかっているときだけなら.
※5
予測モデル(予測に最適なモデル)は生成モデル(真のモデル)に一致しないのですが...
※6
「仮説Hが正しいならばPである.実験結果はPであるからHである.」
これは間違った演繹であり,帰納が含まれているので,このような形で検証できない.
「仮説HならばPである.PではないのでHではない.」
こちらが正しい演繹.仮説検定.
cf.
「仮説検定型」(hypothesis-driven)研究の是非:Yes/Noが言えれば全ては丸く収まるのか
@ 大脳洋航海記
cf.
「ノイズ」の中の脳機能 @ The Swingy Brain
ビジョン,デビッド・マー著
科学哲学の冒険,戸田山和久著
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