2009年10月8日木曜日

計算理論の水準

 
てんぱっている.だども気分転換をしたかったので,投稿.

下記,とあるところに提出した文書の一部.前回デビッド・マーの3つの水準について書いたのですけど,その1つ目の水準である「計算理論」についての僕の理解です.書けば(たぶん)当たり前ですけど,現状に対する認識はいちいち確認しておいたら,その後のコミュニケーションのたたき台にいいのかなと思って書きました.

「現状では,異なる実験課題によって解明されたとされる各領域の機能について,再度,複数の領域を対象に同一の実験課題でやり直し,一貫した説明を行うという研究が成立してしまう.これは,極端に言えば実験課題が異なれば,議論ができないという状況である.この問題は,脳の認知行動の研究において,単に条件間の脳活動にある差をもって機能を定義する場合が圧倒的に多いからである.機能定義を作業仮説に任せてしまっているので,他の研究とつなげることが難しくなっている.作業仮説だけではない機能定義の表現を探す必要がある.

(途中略)
 
 2つ目に,定式化は表現・アルゴリズムの水準だけでなく,計算理論の水準についての定式化も必要である.計算論的神経科学を標榜した研究の多くは,表現・アルゴリズムの水準に関して,つまりヒトの行動や脳活動について定式化することを主目的としているように感じる.しかし,本来は加えて,行う実験の計算理論,つまり脳を取り巻く環境の最適性などを考えて定式化することが計算論的神経科学の仕事だと理解している.脳を理解するためには,脳という対象から目を離し,その周辺である環境に目を向けて考えることが重要である.計算理論を正確に表現することで,その研究の一般性と特殊性が明確になり,他の研究との関連性を議論しやすくなる.」
もちろん,いくら定式化したところで実際の実験刺激などを生成する段階では飛躍が生じるし...でも,がんばりたいところです.
 
 

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