2010年9月24日金曜日
Can Not Even Criticize
こないだ機能を物質に還元する方法は流行らないでほしいと書いたんですけど,先週の某有名雑誌に,領野間の結合性(connectivity)を使った指標で,年齢を予測するという論文がありました.結合性を指標にするなら,皮質の構造よりは機能との因果関係に迫れそうじゃない!? と肯定的な気分で読み始めたんですけど,結果の解釈が...
主の結果はSVR(Support Vector Regression, Support Vector machine for Regression)を使って,回帰問題を解いていて,さらには複数のモデルからAICを使ってモデル選択までしていて,ここまで行った手続きは無難そうに思える論文でした.
ただ,そのあとに,SVRの重み(を使った指標!?)を視覚化した図があって(この論文で目が惹かれるのはコチラの図だったりする),この論文の場合,重みを球の大きさに対応させて,脳の図の上に重ね書きされてる.あたかも,球の大きな領野が重要であるかのように...
(?△?)
確かに,SVMでもSVRでも識別境界や回帰関数を決めるのにサポートベクター(重みのかかっているROI)は効いてきます.その点では,重要なROIですけれど.
ただ,そのROIの脳活動は,情報を表現する特徴を有しているかという点では,重要ではないのでは ? 逆に重みがゼロになっているROIの方が,情報を表現していたりするのではなかろうか.診断の時に,大きな球で表されている領野を見て判断すればいいと言っているようでもあり,まちがっていないか?
あと非線形なカーネルなんか使ってたら,射影された判別のための特徴空間がどんな空間だかは,実際的には,全く解釈できないだろうと思う.
一時期流行ったSVMを使ったfMRIのDecoding研究でも,「識別に有用だったボクセルの値に情報表現があることを言えない」ということはみんなが気がついていて,巧妙に情報表現とは論点をずらしていました(それでも,情報表現について何かしら言えるんじゃないかというのが,期待でした.その期待はまだ消えていないと思いますが).今回は,「識別に有用だったボクセルの値に情報表現がある」と言っているのですよね.まずいんじゃないかな.
とはいえ,本文にもSupplementにも,図が何を計算した結果なのか明示的に書いてないので,何をしたのかよくわかりません.ということで,断定的に間違いとも言えないので,論文名は出さない.
神経科学の論文は,解析を再現できない論文が多い.数式も併せて説明を書いておいてほしい.Supplementでいいから.ただでさえ怪しいfMRI研究が,ますます相手にされなくなってしまうのでは.
いつぞや,機械学習な人たちに自分の先行研究として,ある論文を紹介したときに,とある解析の説明に数式がなくて,「それは書いてなかったんですよ」と言ったら,「それは書いてあるだろう.そんな論文が査読に来たら,リジェクトとするぞ」と言われて,おれがちゃんと読んでないみたいな雰囲気になっちゃって,......orz
Not Even Wrong, by Pauli.
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