2010年9月21日火曜日

【論文】交わる知性,ベイズ最適で.


Bahrami et al. Optimally interacting minds. Science (2010) vol. 329 (5995) pp. 1081-5

論理と実験とデータに?? がつくので,ちゃんとは紹介しないですけど,テーマとしてはおもしろかったので,簡単に紹介.

物事は複数人で相談して決めた方が良い結果になる場合があるのか? を調べた研究.

で,結果は,

2人で相談した結果というのが,個々人の判断をベイズ的に統合した結果になるという.場合によっては,相談して決めた方が良い結果になる.

ヒトにとって検出が簡単ではない視覚刺激をもちいた2択課題で,どちらが正解かを決断してもらうんだけど,個別に決断してもらうと,当然,正解率の高いヒトと低いヒトが1人づつ出てくるわけです(同じ正解率という事もあります).で,この論文のモデルが正しければ,2人で相談して決めた結果が,正解率が高いヒトよりも高くなる場合がある.おおざっぱに言って,能力の低いヒトが高いヒトの半分以上であれば,相談して決断する価値がある.2人の能力に差がありすぎると,相談しても良い結果にはならないけど.

組織で,能力の低いヒトが高いヒトの半分くらいのところになるように階層を区切って,意志決定のグループをつくったら良いのかしらとか思ったり.

ベイズでヒトの行動を説明した論文としては,Körding & Wolpert 2004, Nature の論文が,論理もデータも完璧という感じなんで※1※2,今回の論文はどうにも見劣りします.ただ,素朴な疑問になんとか取り組んだってのは,好きでした.


※1:
Körding & Wolpert 2004は,全てが完ぺきという印象の論文なんですけど,よく調べて実験条件の図などをみると,文章で読むより随分と特殊な運動をさせている印象.すごい狭い範囲でちょこちょこと腕を動かす課題なんで,そこにちょっとがっかりしますけど.

※2:
正確には,タイトルにBayesian integrationとあるものの「ベイズ的に情報が統合されている」とは言えなくて,単に「情報が統合されている」と言っている論文です(他にカルマンフィルターで説明した論文があって,併せて考えればモデル選択していなくてもベイズかなとは思わせるのですが).今回紹介したBahrami et.al.,2010の方は,他3つのモデルの比較をしていて(この比較の仕方がイマイチなんだよなぁ),ベイズ的に統合されていると主張しているので,Körding & Wolpert 2004と比較して難しい事を主張しようとはしている.まぁ,今回の場合,情報が統合されている(相談した方が良い)というだけでは新規性ないですからね.

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