2008年9月3日水曜日

読書感想文 ゆらぐ脳

 
最近,「ゆらぐ脳 」池谷裕二,木村俊介を読みました.

この本で紹介されていたニューロンの時系列データを生データを「見る」ためにデータを音にして何度も聞くというアイディアがおもしろいです.聴覚が時間解析が得意なので,何度も聞いているとデータの性質に気づくことがあるという話しでした.このサイトの真ん中あたりに 神経細胞をピアノの鍵盤に割り当てたときに奏でる音楽が公開されてます(直接にはここ).  実験屋さんにとって,まずは,できるだけ計測されたままの生データを見ることは重要なのですが,データが大量,高次元になってくると,可視化するのにも結構工夫がいります.機械学習,統計学習の分野でも大規模データを扱うので,その可視化に地道な試行錯誤,創意工夫が行われてます(特に研究途中の段階で).音楽に変えるっていうこの方法,大規模な時系列データの「見方」として,他の分野でもとても有用な方法な気がします.

ただ,この本の本質は,上に書いたささいな技術論なんかではなく,研究仕事論がそのテーマ.池谷さんが研究をしている上での信条に関わる事です.普通なら口ごもってしまう事も,軽やかに書かれていて,それは,勇気づけられます.あとがきを読めばわかるのだけれど,もちろん,池谷さんにとっても普段なら簡単に口に出すようなことではない事,それが書かれています.

僕が博士課程に進学しようと決めた夏,つまり修士課程2年の夏ですけど,その時は朝永振一郎(ともながしんいちろう)さんの「量子力学と私(岩波文庫)」を読んだのを思い出しました.博士課程に進学すること,そのために大学を移ること,その時の研究などでかなり陰鬱な気分でしたが,朝永さんの文章は「効き」ました.すこし元気がでたのを覚えてます.池谷さんのこの本も「効き」ます.勢いよく一気に読めてしまうので夜中に手にとっても少しの睡眠不足ですむし,寝不足な翌日も,気にしないっ,という気分になれます.

PS.
朝永振一郎に「ともながしんいちろう」とふりがなをふったのは,恥ずかしながら大学に入ってしばらくするまで,「あさなが」と読んでいました.結構間違えている方いないでしょうか?



 

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