2010年7月7日水曜日

ワールドカップ日本代表傍観記


ワールドカップ,日本代表の試合を,かなり退屈に,少し喜んで,やっぱり残念で,ちょっと悲しく見てました.

ワールドカップで優勝したチームのサッカーは,とても影響力をもつ.そのあと,いろんなチームが真似をするし,スタイルの流行を作る.もちろん,チャンピオンズカップで優勝するチームだってそうだし,日本の高校サッカーで言えば,高校選手権で優勝したチームのサッカーだってそう.だから,おもしろいサッカーをするところが,優勝してほしいと願ってる.

監督だった岡田さんは,ベスト4と言うばかりで,やりたいサッカーがわからんかった.「ベスト4」って目標だけでは,どんなサッカーをするかというビジョンは全く見えない.八百長してでもベスト4に行きたいかって聞かれたら,そうじゃないと答えるはず.サッカーにプライドを持っている人たちが,「サッカーをして」勝ちたいはずで,じゃぁ,次の問いは,「どういう」サッカーをして勝ちたいかって事だったと思う.科学の世界で,ただただNatureやScienceに掲載されたいっていうのでが,幼稚な目標だっていうのと同じだと思う.オシムさんの時は,どんなサッカーをするのか言葉で表現してくれて,そして試合でもそれを表現してくてたから,とても楽しかった(やっているサッカーが良いサッカーだと個人的に思ってたことも楽しかった要因ではある).

で,結局,ワールドカップでの舞台で日本代表が表現したのは,忍耐を強いるサッカーだった.攻撃では自分たちの特徴であるパスワークを封じて,個人技頼みにしてしまったから.本田と大久保と松井の3人の誰かが個人で何とかやってくれっていう,それだけだった.3人の連携で崩すってわけですらなかった.完全に個人頼みで,無茶な頼みを頼まれたのが3人.

攻撃にチームとして意図がなくて,運頼みだったから,ゴールが入る予感や試合展開みたいのがほとんど感じられなくて,とても退屈だった.試合を見ていて,寸分先も予想できない展開てのはつまらないモンだなぁと.次の朝のニュース速報で結果だけ見ればいいような試合でした(試合内容を見ないとそれは分からないのですけど).

象徴的だったのは,パラグアイ戦,川島からフィード(攻撃陣にボールを供給すること,必ずしもパスではない,と定義する)が,1-2回をのぞいて,全てパントキックなどロングフィードだったこと.ロングキックをして,それを拾うなんてのは,ほとんど運頼み.

悲しかったのは,このサッカーの延長に,前にやってた日本の特徴的なサッカーがないような気がしたから.こんなサッカーが日本でもてはやされて,流行るようになったら最悪だなぁと思ったから.正直,オシムさんが倒れてからというもの,超保守でナイーブな岡田さんの代表試合はおもしろくなくて,今回のワールドカップはそのトドメだった.

残念に思ったのは,ワールドカップの舞台で,日本のパスサッカーがどれだけ通じるのかを見られなかったこと.デンマークでやったように,カメルーンやパラグアイ相手だったら,恐れずにパスを回して攻撃を作るという挑戦をしても良かったんじゃないかなと思った.強い相手とやった時だって,例えば,年明けにオランダとやった親善試合では,前半45分は何回もおもしろいパス交換からの攻撃が見られてた.それで大敗したって,それが世界との距離なのだから,よかったんではないかなぁ.

どんなサッカーをしたいか,それをどうしたらピッチで表現できるかってのが,サッカーに関わっている人の解くべき問題.ぎりぎりサッカーと呼んでもらえるアンチサッカーをして,勝ってもホントは何の意味もない.幸か不幸か,サッカーが唯一の希望というわけではない日本なら失敗しても致命的ではないし,それでいてサッカー選手をとりまく環境が悪くない日本では,経済的にも文化的にも挑戦できる余裕を持っている国だとおもうのだけど.アフリカ諸国や南米の中堅国よりはずっと勝つことのプレッシャーはなかったはずなんだけど,日本の文化である自分で首を絞める慣習にならってしまった.

閑話休息:
パラグアイやウルグアイが守備的なのは,大陸予選でサッカー大国ブラジルやアルゼンチンと戦わなければいけないからというのを言う人がいて,妙に納得した.南米には今回は出ていないけどコロンビアやエクアドルなどのそこそこ強い中堅国もいる.一方で北中米・カリブ海に属するメキシコ(17位,2010年5月)は,パラグアイ(31位,2010年5月)やウルグアイ(16位,2010年5月)と同じくらいの実力だと思うんだけど,大陸予選で強い相手はアメリカくらいで,しかも出場枠が3枠もあるんで,彼らの好きなパスサッカーをして勝ち上がれる.いつだったか,残り10分で負けているのに,ひたすらパスを回して,パワープレイに全く走らない.センタリングすらあげない.パスとドリブルで中央から崩そうとしていて,さすがにアホかな,と思っていたのだけど,徹底したパス回しで終了間際にゴールッ!とりはだがたった.僕のメキシコサッカーのイメージは,この印象が決定的になっている.

日本にも,あの時のメキシコのような試合をしてほしかったわけです.ただ,勝つためだけのサッカーをせざるを得ない要因があったのもわかる.日本には実力がなかったり,直前の親善試合でうまくいかなかったり,実利主義的な日本だとやっぱり勝ちを求める記者やサッカー関係者が多くいたこと,など,など.

あと,あの我慢強いサッカーをとても高いレベルでやったってのは,すごいことでした.11人全員が精度良く守備のバランスを考えて,それを忍耐だけで実行するようなサッカーを90分(パラグアイ戦では120分も),よくやれるなという感じでした.もともとはパスサッカーをしていた選手達が,割り切ってあの戦術を徹底したことは本当にすごかった.選手達のメンタリティはすごいなぁと.少なくともアフリカやヨーロッパの国では,あれはできない.

で,ベスト16に進んでみたら,その反響はすさまじく大きい.僕もデンマーク戦はうれしかったし(特に本田が翻弄して,岡崎が決めたゴールは!).何人かの選手は,ステップアップ(海外移籍)の機会を得られようとしています.グループ予選で敗退してたらこれはなかったから,勝てば次の可能性が大きく広がるんですよね(だからといって,勝つことを目標にするなんて全く思いませんが,僕は).

そして,日本代表の試合が終わってしばらくたった今では,さっきは「この延長に日本のサッカーはない」と書いたけど,もしかしたら,これを土台に日本の特徴的なサッカーができるのかもしれないと思いはじめてたりもする.最後の最後,中村憲剛を中心に攻撃的なドリブルとパスワークとを見せてくれたのが,希望でした.

てことで,次あたりは西野さんあたりが監督にならんかなぁ.

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