2012年8月10日金曜日
勝敗
何事も勝たなきゃ意味がないと思うけど,勝つだけでも意味がない.サッカー選手だったら,当然だけど,サッカーで勝ちたいわけ.じゃんけんで勝ったって嬉しくないわけで.そういう事を,さらに,つきつめて考えていくと,サッカーって何かって事を考えることになって,さらには好きなサッカーって何かって考えることになって,好きなサッカーで勝ちたいって事になる.
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大会で勝ち上がるほど,多くの人が見るようになる.見られる回数や見た人の人数が一番多いのは,勝ったサッカーだ.で,そうすると,勝ったサッカーがサッカーだって事になってしまう.もし,自分が嫌いなサッカーを自らして勝ってしまうと,その嫌いなサッカーがみんなにとってのサッカーになってしまうわけで,それって嫌だ.だから,好きなサッカーをしないと意味がない.
ただ,好きなサッカーをしたところで,見てもらわないと,世界に広まらない.勝たないと誰にも見てもらえないわけで,勝たないと意味がない.だから,勝つ事に意味がある.好きなサッカーで勝つ事に意味がある.
ところで,勝つ事は重要だけど,決勝戦だけは,勝敗は関係無い.勝っても負けても決勝戦はみんなが見ている.負けてもなお,見ている人達に最高のサッカーだったって思わせればいい.そうすれば,自分の好きなサッカーが,みんなにとってのサッカーになる.
今日の試合,みんながしたくなるサッカーをしてたのはどっちだったか.
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僕にとっては,研究がそう.
2012年6月12日火曜日
EURO2012
EURO2012の試合を見たいがためにWOWOWに加入したくもなったが,民放でやっているのを録画して,小出しに見るだけでも時間的にムリだと気づいてやめた.
4年前は全く見なかったけど,8年前のギリシャが優勝した時は,かなりの試合をフォローしてた.その頃は僕は大学院の修士学生.研究室の技官の方にWOWOWから録画してもらって,プロジェクターで見てた.まだ全試合録画してもらったのをDVDとして持っているんじゃなかろうか.
その時は,ポルトガルの黄金世代と呼ばれたフィーゴ,ルイ・コスタ,パウロ・ソーザらが最後のEUROと言われた年で,ポルトガルを応援してたので,決勝にいったのが嬉しかった.この時,C・ロナウドはまだ10代ではなかろうか.大会初戦のギリシャに負けてスタメンをはずされていたルイ・コスタが準々決勝,対イングランド戦で途中出場して決めたゴールは,鳥肌がたちまくった.ペナルティエリアの左外,相手ディフェンダーを引きづり倒しながら,弾丸のシュート.柔らかいドリブルとパスが魅力のルイ・コスタが見せた執念というか勝利への力強い意志みたいのが表現されたシュートだった.ポルトガルは,開幕戦に負けたギリシャと決勝でも当たってもう一度負け,準優勝.勝者以上に敗者が際立つ決勝のあとでした.
さらに思い出話をすると,海外の試合で記憶に残っている一番古いのが,92年ヨーロッパ選手権決勝のドイツvsデンマーク.EUROなんてしゃれた言い方は日本ではされてなかった時の大会.ドイツは東西統一ドイツとして初の国際大会で,コーラーがディフェンスの中心にいて,FWはたぶんクリンスマンだったような気がする.デンマークは,後に日本代表監督になったオシム率いるユーゴスラビアの代替出場で,結局,この決勝も勝って優勝.攻撃ではラウドルップ弟が,守備ではGKシュマイケルが活躍した大会でした.ほとんど知識もない中学生だったので,何となく見ていたが,海外の試合をTVでやること自体が貴重だったので,ビデオで録画して何回も見たと思う.この時のVHSビデオは,たぶんまだある.その時のプレーを思い出すと,やはりFootballは進化しているんだなと思う.戦術や技術が変化しただけと言うだけでなく,おなじ事を目的にした技術や戦術でも圧倒的に洗練されていたり,スピーディーになったように感じる.
ということで思い出はこのぐらいにして,今年のEURO2012.数試合を消化しての感想.
オランダvsデンマーク、ドイツvsポルトガル、スペインvsイタリアをだいたい見た。ここまでで自分の好きなチームは、ドイツかイタリア、次いでオランダ。パス回しがベースにあるけれど,他の攻撃のバリエーションを高いレベルで持っているチーム.
スペインは強かったけど、おもしろくない。攻撃はペナルティエリアの幅から広がらないし、パス回し以外のバリエーションがないから俺には単調に見える。パス回し以外の選択肢があってパス回しをしてるというより、他の選択肢を全く排除している感じがする。自ら自分たちの限界を定めているような感じ。特にスタメンの布陣をみると、チームとしてもパス回ししか志向してないのだろう。ただ,まぁ,パス回しはスゴイ.見た試合に関してはイニエスタが凄すぎたように思う.あーやって,極端な事をやったほうが価値観というのは根づくのかな.今はどのチームもパス回しがベースになっているのは,確実にバルサやスペイン代表の影響だし.
5年か10年か前、ユース世代の大会だと思ったけど、メキシコが残り10分くらいで負けてるんだけど、真ん中をこじ開けようとして、クロスは使わない。結局、同点だか逆転して、この徹底ぶりはすごいなと感心した。
スペインも同じ事をしているのだけど,そういうのを感じなくて、もう強いんだから、次のチャレンジ(パス回し以外の攻撃を組み合わせる)をしてくれないかなぁ.まぁ、スペイン以外が優勝するしか、スペインを変えられないか.スペインには準決勝くらいで負けてもらいたい (一方で、今大会で負けたあとも、あのパス回しに固執するスペインを見てみたいにもする。強くないチームが一つの攻撃にこだわるのは嫌いじゃない。).
ポルトガルも攻撃は単調。スペインと違うのは、チーム能力としてこれしかできないという哀愁漂う感じ。基本的にはC ロナウドだのみ。下克上目指して,こちらには頑張って欲しい。少しは応援している.ロナウドとナニと左サイドバックの選手(名前忘れた)が近い距離で絡んだ時は何かがおきそうな気はする。それにしても、ロナウドはボールを持ったら何かしそうな気がするなんてものではなく、必ず何かする。必ずシュートを打つか、ペナルティエリアに入ってパスまで行く。ロナウド自身も自分がボールを持った時だけに賭けている感が見える。ボールを持った時以外はほとんど何もしていないw けど,ドイツ相手にあのドリブルができるなら許されるだろうな.
ドイツは右サイドのミュラーがトラップせずにダイレクトなクロスをあげるのが攻撃のアクセントになってて楽しい。20年前とは違って,今ではドイツも綺麗なパス回しをするし、ドリブルを得意とする選手もいるし、攻撃のバリエーションは豊富。見てて楽しい。1対1で負けないこだわりは相変わらずなので、強い。今のところ一番楽しくて、一番強いと思う。まだ出ていないサブのメンバーも充実しているし,決勝までの長丁場で怪我人とか出ても戦力の落ちないチーム.スペインとやって勝ってほしいチームの第1候補。優勝してほしいチーム.
スペインと対戦したイタリアも、まずまず。全体に細かいパス回しで局面を打開できるし、攻撃のアクセントになるピルロがいる。ピルロは、中村憲剛を大好きなのと同じ理由で大好きだ。ゴールに直結するという意味のダイレクトなパスで攻撃にアクセントをつけられる。バロテッリだけは、いやはや不安。。。
オランダはパス回しがうまいという印象は小さいが、ロッペンのドリブルやスナイデルのパスはアクセントになる。フォワードはいい選手が何人もいるし、ファン・ボメルのような渋い選手もいるし、総合的には強かった。決勝トーナメントに行って,調子を上げてほしいチーム。スナイデルも好きな選手の一人。
日本代表も最終予選があって試合を見ているから、それと比較してしまうが、今の日本の選手があと1-2年、経験と自信をつければ、オランダやイタリアとはいい勝負をしそうに思うのは,ひいき目か!? 今の日本代表ですらロナウドさえいなければポルトガルに10回中7回くらいで勝てるように思うし、いわんやデンマークには。そういえば,開幕戦のポーランド vs ギリシャも早送りで見たけど,この両チームとやっても,日本の方が強いと思えた.日本代表については明日のオーストラリア戦が楽しみだ.
2012年5月25日金曜日
前部帯状皮質前膝部への局部微少電流刺激は悲観的意思決定を誘発する.Amemori & Graybiel. Nat. Neurosci. 2012
Amemori & Graybiel. (2012). Localized microstimulation of primate pregenual cingulate cortex induces negative decision-making. Nature Neuroscience.
誰かに論文紹介できるくらいには読んで,いつも参加させてもらっている医学部の研究室での文献紹介にて紹介した.ただ,検索したら,こちらに日本語で内容が書かれていたから,研究内容についてはそちらをごらんあれ.新着論文レビュー FirstAuthor's 「マカクザルに対する前帯状皮質の前部への局所的な微小電気刺激は悲観的な意思決定を導く 2012年5月2日」
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用いられる解析方法(&実験設計)は,「報酬系と意思決定」というテーマで,かつ電気生理学研究としては,1つの極.とっーても洗練されてる.これまで断片的に採られてきた先端的な方法が網羅されてる.行儀良く巨人の肩に座った研究.お手本.
2択の意思決定課題なので,Conflict を意思決定行動のエントロピー(情報量)と定義するのは,ちと大仰.この研究だけを見た生理学の人からは,「なんでこんな面倒な解析をするのか」という声も聞こえそうな気はする.だけど,今後,もっと選択肢が増えた複雑な状況に拡張するには,妥当な方法でしょう.
情報学や工学の人にとったら,何ら目新しい方法ではないけれど,実験科学の研究にきちんと適用するのは,それはそれで相当に大変.この研究は,適用するための細心の注意が払われていると思う.脳研究は,世界全体からすれば,重箱の隅をつつくようなことだけど,重箱の隅をつつくのも大変.隅をつつくのに,スプーンじゃ無理だろう? たぶん,箸だな.そんでもって,箸をうまく使わないといけない.
ところで,検証するのに技術的に可能かどうかの際(キワ)を攻めた研究はイイ研究だと思うけど,Nature,Scienceに掲載されるには,Reviewer(この論文だと生理学者) に理解されるかどうかの際が重要だったりする,たぶん.その点でも,この論文は,生理学者の理解の際の内側にきっちりと納めてるのが見事な感じ(こう書くと高慢かな.科学も社会的な営みで発展しているので,他の誰かに理解されなきゃ価値はないと見なされちゃうわけで... そういうことを考慮するのも多少は必要でしょう).
逆に言えば,実験家といえども,ここで何を計算しているかわからなかったら,さすがに不勉強と言われても仕方ないよね.だって,(たぶん)大学院では実験の訓練を受けてない理論の人が,ここまでの実験を行うんだからさ.実験は,神経活動の記録,微少電流刺激,投薬実験と行われていている.実験条件のパラメータ(報酬量と罰の量)も連続と言っていいほどで,多くの条件で実験されいる.記録している神経活動の数も一般的な場合より(たぶん,倍くらい)多いんじゃないかな.かなり読みごたえアリ.
個人的には,Behavioral patterns とか Firing patternsとか pattern という情報学にも親和性がある単語が使われているのが,あとからじわじわくる.pattern という単語が使えるほどに,実験条件のパラメータをふっている(連続にしている)ってことだし.じわじわ.
認知神経科学とかシステム神経科学の中の人,全員に,精読をおススメする論文です.自分が研究している領野だとか機能だとかに関係無く,参考になると思う.fMRI研究をしている人にも,解析方法が見慣れているはずなので,理解しやすいはず.
PS.
2年前だかにclosedなセミナーで,聞いてたはずなのに,さっぱり覚えていなかった(図だけはおぼろげに記憶あり).というか,その後に予定されてた自分の発表が気になって,たぶん,上の空で聞いてた.文献紹介で紹介したけれど,さらに精読すれば理解が深まりそうなので,もうちょっと読んでみたい.Supplementary は,紹介するのに必要なところしか読んでいないし.
PS. PS.
前回紹介したのもそうだけど,方法としては極みと言っていいのに,それでもこの程度.あー,科学って地道.1つの論文で心躍るほどにスゴイってのはないなぁ.脳の研究って,その点ではつまらない.
PS. PS. PS.
Pregenualという単語を知らなかったのでメモ.genual はgenuの複数形.pre(前)+ genu(膝,ここでは脳梁膝の意味か).ACC か Cingulate cortex が後にくる場合でしか,使われてないようす.タイトルで前帯状皮質前膝部と訳したのは,造語.一般に使われているかどうかは知らない.
2011年12月30日金曜日
知覚学習は,視覚刺激の提示なしでも,fMRI 脳活動をデコードし,ニューロフィードバックすることで引起こされる. Shibata et al. 2011
今回紹介する論文のような,新しい方法をとりいれると研究が進展していくのだと思います.ひとくちに科学と言っても,分野によっていろいろな科学のあり方があって良いと思うのですが,採用する方法がその分野の科学を特徴づけるのは間違いないです ※1.
ということで,この科学の住人なので,自分の考え整理してみる.
Shibata et al. 2011.
Perceptual Learning Incepted by Decoded fMRI Neurofeedback Without Stimulus Presentation.
Scienc 334 (6061):1413–1415.
この研究の主な論点は下記の2つです.
1.fMRI ニューロフィードバック による因果性
2.傾きの知覚学習は,V1/V2が関与している
まず1つ目の因果性について
自然現象の因果性にせまろうとする場合,対象に介入する必要があります.脳の研究ならば,まさしく脳の活動に介入する必要があります.例えば,動物実験などで神経細胞に電気刺激をして脳活動を起こすような方法です.
少し脱線しますが,脳で難しいのはいたるところで結合があることです。一部の領野を刺激したつもりでも方法によっては、他の領野も刺激されていたり,情報が伝達されている場合があります。例えば,O'Doherty, et.al., 2011. Active tactile exploration using a brain-machine-brain interface. Nature. では猿の感覚野を刺激して、触覚に基づいたらしき課題を行わせてます.ただ,刺激した感覚野から他の領野へ刺激が伝わっているかもしれないので,本当に猿が触覚に基づいて判断しているかはわかりません.
今回紹介する論文に戻ります.研究のプロトコルは順に
- Pre-test stage:被験者の知覚判別能力を行動指標によって計測する.
- Decoder construction stage:脳活動データを計測し,Decoder(翻訳機)の学習を行い,視覚刺激を見ている時の脳活動パターンを特定する.
- Induction stage:視覚刺激提示によるニューロフィードバックを行い,被験者にV1/V2の脳活動を制御させる.
- 提示する視覚刺激は1,2で用いたのとは異なり,さらに提示した刺激では知覚学習は進まない
- 被験者は,後頭葉の脳活動をもとにしたフィードバックがある事は知っているが,後頭葉が視覚に関わる領野だったり,最初に行った知覚判別にかかわる領野である知識は持っていない ※2
- フィードバックは,2で特定した脳活動パターンに類似性が高ければ大きな円が表示され,被験者は円が大きくなるようにする.脳活動結果のグラフで指標とされている Likelihood(尤度) はこの類似性です(尤度を類似性と言いかえた深い意味はなし.尤度という言葉は情報科学の人以外にはなじみがないと思って.ちなみに,尤度が何を算出したモノなのか詳しくはわかりません).
- Post-test stage:ニューロフィードバック実験終了後に,再度1と同じ実験課題を用いて,知覚判別能力を計測する.
- 1の時の比較して,知覚判別能力が向上していた.つまり知覚学習があった.
対象とする知覚学習に関係しない視覚刺激提示でニューロフィードバック(Decoding neuro feedback)を行って脳活動を操作した結果,知覚(厳密には知覚にもとづく行動)に変化(学習)があることを示しました.この事より,視覚刺激の入力がなくても,脳活動を変化によって知覚を変化させることができる,という結論を得られました.
簡単に「によって」と書きましたが,今回の方法は電気刺激をするように脳活動自体に直接介入したのと同じと考えられるので,「得られた結論は,相関するというだけでなく,因果性がある」と言及できる方法です.さきほどのをもっと明示的に書くと,「脳活動の変化が原因で知覚学習は生じた」と言えるわけです.
ヒトのfMRI研究で,もしくは健常者で脳の情報処理について因果性に言及しようとすると,不可能と言いたいくらいに難しいので,画期的な事です.fMRIを使わなければTMS という方法を使ったり,健常者でなければ脳損傷患者に協力してもらうなどの方法で,因果性について言及するという研究が考えられます.
この結論について,ここまでのところでは,
(神経科学では当然ですが)学習は脳のどこかで行われている
という仮定があってはじめて,脳活動の変化によって知覚学習は生じた,と結論できます.上の議論は仮定があって成り立つ事ですから,やはり,その仮定である「知覚学習が行われている脳の領野」を示さないといけない※3 ※4.
この論文は単に方法の提案をしたいわけではありません.論文でも, ”The main purpose of our study was to test whether early visual cortical areas are sufficiently plastic to cause VPL of a specific orientation as a result of mere repetitive inductions of activity patterns corresponding to that orientation. ” と書かれています.そこで次の論点です.
2つめの論点,知覚学習に関与している領域について
1つめの論点で書いた検証だけでは,脳のどこが学習に関与しているかは自明ではありません.簡単に考えると,V1/V2の脳活動をフィードバックして被験者に制御させているのだから,学習自体もV1/V2だろうと結論したくなりますが,それは自明ではありません.
なぜなら,ニューロフィードバックで使った脳活動はV1/V2ですが,V1/V2は他の領野とつながっていて,V1/V2の脳活動は他の領野の活動を引き起こしていると考えられるからです.そして,V1/V2で表現された視覚刺激の情報を他の領野が受け取って,他の領野の脳活動変化によって学習が行われているかもしれないからです.また,Fig. 2 で脳の活動変化の指標となる尤度が学習日数におうじて上昇していますが,他の領野の学習による脳活動変化がV1/V2へ影響しているだけかもしれません ※5.
この研究ではV1/V2の活動変化によって学習が生じた事を検証するために,まず,
V1/V2の脳活動変化と知覚(にもとづく行動変化)に相関があること(Fig. 3E)
を示しています.サンプル1つは被験者1人を表しています(たぶん).
少し脱線しますが,サンプル1つが被験者1人を表す相関図は,fMRI研究でよく使われます.例えば,「領野Aと領野Bのの結合性を示すために使われたりもします.最近気づかせてもらったのですが,被験者1人を1つのサンプルとする相関図だと「領野Aの活動が大きい人は,領野Bでも高い」ということまでしか言えません.もっと単純にいうと,「脳活動が平均的に大きい人や小さい人がいる」というだけです.ほとんど情報はありません.この相関図を出すならば,サンプルは試行にして作るべきです.そうすれば,「領野Aの活動が大きい時には領野B も大きい,Aが小さい時にはBも小さい」と言えて,領野Aと領野Bの活動は同期していそうですし,結合性があると言えるでしょう.行動と脳活動の相関図,感覚刺激と脳活動の相関図でも同様です.
今回の研究の場合,1人の被験者で学習した時としなかった時など複数のサンプルをとることはできないので悩ましいところですが,同じ批判はあると思います.
V1/V2の活動変化によって学習が生じた事の検証として,他に Supplementary のFig. S9 があります.説明を論文の順序と逆にしますが,
Fig. S9 B
まず,fMRI decoder construction 時の脳活動データを用いた場合は,他の領野でもV1/V2と同様の判別率を得られた.このことから,他の領野も,傾きの情報表現は持っていることがわかります(「情報表現を持っている」かについては後述の議論を読んでください).
Fig. S9 A
次に,試行毎に尤度(「ニューロフィードバック時(Induction stage) の V1/V2 脳活動パターン」と「翻訳機学習したV1/V2の脳活動パターン」との類似度,ニューロフィードバックに使っている値) を他の領域の脳活動から予測しました.「コントロールとして」V1/V2の脳活動からの予測もしています.
その結果.尤度は,他の領域の脳活動と比較して,V1/V2でよく予測できています.V1/V2が学習に関わっているという十分条件が示しています.論文には ”the V1/V2 itself as a control” と書かれていますが,どちらかというと他の領域と比較して,V1/V2ではよく予測できたと言うべきところなのでしょう.これが逆になっているのは,「他の領域が学習に関わっていない」と言いたい事の表れかな(ちゃんとフォローできていませんが,著者らによる先行研究から考えると).もちろん,仮説検定で「帰無仮説である」ことを検証できないのと同じ論理で,「他の領域が学習に関わっていない」ことは検証できません ※5.
翻訳機が選択したボクセルは情報を表現しているか?
fMRIの脳活動のデコーディング(翻訳)を用いて,科学的な知見を得たいという試みはたくさんされています.
今回の研究でも,述べられている結論を言うためには,選択されたボクセルが傾きを表現している,ことが必要だとは思います.今回は,multinomial sparse logistic regression(Yamashita et al., 2009)をつかって,3つの傾き刺激をクラス分類しています.....えっと,表現を持っているか,僕にはわかりません ※6.
たとえば,Taget以外の視覚刺激2つを変えて翻訳機を学習させても,Targetについては同じボクセルが選ばれるのだったら,選択されたボクセルは特定の傾きの情報表現をもっていると言って良いのでしょうか.
例えば,Hassabis et al., 2009では,海馬傍回からは2つの部屋についてクラス分類できていて,海馬からは各部屋の位置についてクラス分類できています.つまり,一見,海馬と海馬傍回で階層的な位置表現になっていることを示唆するような内容です.ただ,たぶん著者らこの方法と結果からはそんなことは言えないことをわかっていて,「位置情報は1つのニューロンで表現されるのではなく,集団で表現される」という結論を述べるにとどまっています.
Dosenbach et al. 2010 では,SVR(Support Vector Regression, Support Vector machine for Regression)によるクラス分類で選択された領域が情報表現を持つと仮定して,さらに解析を進めていますが,おそらく間違いでしょう.Fig. 2 以降は間違えている.
一般に分類に最適なボクセルだからといって情報表現を持つとは限りません.前者のHassabis et al., 2009は,情報表現を持つ とは言わずに踏みとどまりましたが,後者の Dosenbach et al. 2010 は情報表現を持っていると解釈して解析を進めました.
SVMは,特徴空間の中で分類境界に近いところのサンプルのみを用いて境界が更新されます.なので,境界から離れたところのサンプルが加わっても境界が変更せず,分類するという点で汎化性はあります.ただ,境界を決めるのに使われているサンプル,つまりクラス分類に有用なボクセルを持ってきても,それは情報表現を持っていないと解釈するのが自然ではないでしょうか.各クラスの特徴を持っている,つまり情報表現をもっているは,境界から離れてクラスの中心にあるボクセルだと思うのです.もしくは,他のクラスから離れたところにあるボクセル.また,致命的なのは,カーネルにより写像変換された特徴空間でクラス分類しているので,どのような特徴空間でクラス分類しているか解釈するのが困難です.
確実なのはクラス分類するのではなく,例えば Miyawaki, Uchida et al., 2008 のように,情報表現のモデルを用いて表現して見せてくれれば,選択されたボクセルの総和として再構成できた程度に情報を持っていると言えるでしょう(Miyawaki, Uchida et al., 2008 でも,局所的な表現としてはクラス分類しています.ただ,それは得られた結果を基底表現として全体を再構成しています).その辺の議論はコチラ.
ですから,これを使ってニューロフィードバックを行い.....因果関係を検証するのに,この研究をプロトコルの1つに組み入れなければいけないとなると,目眩がしますねぇ....
最後に,ここまでスクロールしてくれた奇特な方に.次の論文を紹介します.マイナーな雑誌なだけに,あまり知らないと思うので挙げておきます.僕も友人に教えてもらいました.
Boulay, C. B. et al. 2011. Trained modulation of sensorimotor rhythms can affect reaction time. Clinical neurophysiology 122 (9):1820-1826.
今回紹介した論文と方法の点で似たような事が脳波で行われています.この論文では脳活動を抑制することまでも行っています.アイデアはかなり面白いです.ただし,いかんせん荒削りです.ちょっと理解しにくいし,科学として詰め切れていないのがかなり残念な論文.でも,方法のアイデアだけはすごい.
おわり.
※1
採用する方法によっては,ろくな科学にならない.fMRIによる認知科学の研究は,まだまだ科学になるかならないかの瀬戸際なところ.そんな風に感じています.
※2
僕は,被験者が視覚野からフィードバックされていること知っていてもいいように思うんですよね.明示的にガボール図を想像してても,この研究の論理は破綻しないような気がする.視覚刺激の入力がなければ同じだと感じてしまう.でも,それではダメだという人がいるのも想像する.なんでだろう?
※3
ちなみに,この研究では(ほとんどの神経科学者もそう考えていると思いますが),研究で対象となっている知覚学習は特定の領野で行われているだろうという仮定があります.つまり,学習の局在性が仮定されています.領野間での結合性変化によって学習するのなら,また別のことを考える必要はあるかもしれません(←あまりちゃんと考えていないので,本当に別の事を考える必要があるのかはわかりません).
※4
正直に言うと,僕は,脳の情報処理が知りたいだけで,どこの領野で情報処理されているかはどうでもいい,ただ,脳の情報処理である事を言うためには,やはり脳のどこで行われているか(もしくは複数の領野間のネットワークとして実現されている事を示さなければならないわけです.だから,好きでもない実験をやるわけです.実験を考えるのは好きですが,実験するのは大嫌いです.でも,必要だから実験します.
※5
「他の領域が学習に関わっていない」と言ってしまうと,Nieuwenhuis et al, 2011. Erroneous analyses of interactions in neuroscience: a problem of significance. Nature Neuroscience 14 (9):1105–1107 で批判されているリストに挙げられることになります.厳密性だけが科学だとは思いませんが,神経科学は解析などで使われる数理の仮定(制約)を無視する傾向にはあると思います.Nieuwenhuis et al, 2011のTable 1の結果を見てください,ひどすぎ.今回紹介した論文では正確に,”The results of these two offline tests indicate that influences of the neurofeedback on VPL were largely confined to early visual areas such as V1/V2. ” と書かれていて,それ以上の言及はありません.
※6
この議論するには,論文に書いてあるだけの情報でそれは断定できないというのが正直なところです.fMRI研究は,古典的な方法ですら随分と解析が込み入っているわりに,分析方法の記述は多くない.典型的な方法を採用しているにしても,当事者に話を聞くと,結構ヒューリスティックスだらけだったりします.このへん,fMRI研究の信用ならないところです.かといって,事細かく書けといわれたら,あまりに面倒だしな..分析のプログラムコードをSupplementとして挙げとくしか方法はないかなぁ.
2011年12月9日金曜日
論文管理アプリケーション Papers の 使い方
Mendeleyには,いろいろと共感するし,応援したくもなるんですが,でもまだ全然使えないなぁという印象.アプリケーションとしては,Papers の方が比べものにならないほど洗練されています.Papers が下火になってほしくないなぁと思ってこれを書きました.
一度,赤い家を使っていた時にも書いたのですけどね.コチラ.Mac を使っている人には,オススメします.79USドルです.学割で40% ディスカウント.30日間は無料なのでとりあえず使ってみてはどうでしょうか? 使ってみれば安いことがわかります.
ちなみに,僕は Mendeleyをちゃんと使った事ないし,有償アプリとしては有名なEndNote も使った事ありません.比較してどちらが良いかというのは正確には分かりません.
では,使い方の紹介.
論文検索&書誌情報の取得
一番左側のカラムにある [Search] をクリックして検索画面を開きます.
検索窓でタイトルでも入力して検索すれば,見つかるでしょう.
カンタン!
検索して出てきた論文をダブルクリックすれば,新しいタブが開き,書誌情報のあるWebサイトに飛びます.複数を指定して,一括で取り込むこともできます.後述するTips にある検索トークンを使うとさらにスムーズです.
PDFの取得
新しく開いたタブには,書誌情報のあるWebサイトが表示されてます.
WebサイトにあるPDFのリンクをクリックすれば,PDFを取得できます(図の左円).
カンタン.
PDF取得後,右下にある紙と地球の図のボタンを使えば,取得PDFとWebサイトの表意を切り替えられます(図び右円).Supplement が欲しい時などは,再度Webサイトにもどって,取得します(次を参照).
SUPPLEMENTARY !!
青い家に移ってきてからこれができるようになりました.これはかなり重宝してます.便利です.最近は Supplement を読まないと,実験方法や解析方法がわからないこと多々ありますよね.
Web サイトを表示しておいて, Supplement のリンクをクリックすると(上図,左)
・Download PDF as
supplemental data
・Create new paper
for downloaded PDF
・Replace current PDF
with newly
downloaded PDF
と聞かれるので Download PDF as supplemental data を選択.論文PDFとは別途保存される.カンタン.
右のカラムの [Supplements] をクリックすると保存された Supplements が一覧されます(上図,右).ファイルをダブルクリックすればアプリケーションから開きますし,スペースキーを押せばポップアップ表示で簡易的に見られます.
Supplement をいくつでも保存することができます!
movie ファイル とか,いろんな形式のSupplementを保存できます!
Web ブラウザからPapersに取り込みたい!
まず,準備.
こちらのSupport サイトに行きます.
Step 2 の下にある [Open in Papers] をWeb ブラウザの ブックマークバーにドラッグ&ドロップで移動します.
これで準備は終わり.カンタン.
インターネットサーフィンをして,およっ,と思った論文があれば,ブックマークバーにある [Open in Papers]をクリックすればOK.
Pubmed など論文検索サイトでない場合,書誌情報がなくて,自分で書誌情報が入力しないといけないことがあります.その場合は,Papers で検索した方が簡単かもしれません.
さて,取得した論文を読む時は.
- [View]-[Read Full Screen]
- [Command + Shift + F ]
- 下側にある [Read Fullscreen] をクリック
上記の方法でどれでもどうぞ.
ノート(右側の円) 画面の下にカーソルもっていくとバーが表示されるので,その一番左をクリックすると,ノートが表示され,書き込めるようになる.
ハイライト(左上の円) 本文中の文字を選択して,右クリックで [Highlight selection]ハイライトになっている文字を右クリックすると [Change Highlight Color] があり,ハイライトの色を変えられます.
キャプション(左上の円2つ目) 適当なところで右クリックし,[Make a note]をクリック.
※ ハイライト,キャプションについてはまだ少し使いにくくて,作成したあとにキャプションの位置などを変更できなかったりします.
僕は,PDF を Adobe acrobat で開いて,acrobat の注釈機能を使ってます.Adobe acrobat で作成した注釈をRead Full screen で読むことはできます.Papersで保存したPDFは [Open PDF with ...] で任意のアプリケーションで開けます.
取得した情報は出力してこそ!
これもPapersの大きな特徴の1つです!カンタンにアウトプット.
- ショートカットキーを押す(左図が表示).
- キーワードを入れます.
- 結果が出るので,選択してEnterを押す.
- Enterを押したその指で!? 続けてキーワードを入力.
- 次の検索結果が出てきます.
- また選択して Enterを押します.
気がすむだけ繰り返し,気がすんだら,
- 例えば,[ Insert Formatted Reference ] を選択して,Enter を押す.
- 選択した複数の論文について,書式の整った書誌情報が出力できる.
多くのアプリケーションに対応しています.場合によって,[Insert Formatted Reference] が選択できない時がありますが,[Copy to Clipboard] を選択すればいいだけです.そして, ペースト(貼り付け)!スゴイカンタン!!
これは,プレゼンや報告書などせいぜい10個程度の参考文献ですむ場合に便利です.論文を作成する時などたくさんの参考文献のリストを作りたい時は,Collection (タグに相当)に集めて,一括で出力すれば良いと思います.
ショートカットキーの設定や書誌情報の書式などの設定は [Papers]-[Preference ...] を開いて,Manuscripts で行います(右図).
Favorite Styles をプルダウンし,moreを選択すると,たくさんの書式が用意されています.プレビューを見ながら,書式を選択できます.現在(2011 Dec. 09)のところ,1405 の書式があるみたいですね.
Papers を開いて,真ん中のカラムで論文を選択して [右クリック]-[Copy] とかおなじみのショートカットキー Ctrl + C でコピーして貼り付けても,書式が整えられた書誌情報を貼り付けられます.
その他の機能
- iPhone/iPadと同期.
- 検索は Pubmed,Google Scholar,Web of Science など多くのデータベースから選択して使えます.単独にもできるし,複数を組み合わせても使える.
- Keyword
- タブですね.
- Collection
- 左カラムにフォルダのように表示されている Collection も便利です.上記で紹介したKeyword とは違うけどタブに相当します(同じ論文を異なる Collection に入れらます).3種類の Collection があります.
- Manual Collection: 手動で論文を分類して使う.
- Smart Collection: 条件を設定しておくと,自動的に分類される.これが便利.
- LiVfe Collection: 他のPapers ユーザーと議論する時に使う.ダレカト ツカッテミタイ.
Tips
検索トークン(blue search token)
キーワードを入れたあとにEnterを押すと,ブルーの背景で囲まれ,右側に矢印が出てきます(右図).
矢印をクリックすると,そのワードが 何を表すのか指定できます.トークンを覚えておけば,キーボードから指定して入力することも可能です.
・主なトークン
Title, [ti: ]; Author, [au: ]; 1st Author, [1au: ]; Last Author, [lastau: ]; Soruce or Journal, [so: ];
・複雑な検索方法については コチラ
検索トークンは赤い家(Papers 1.x)の時からあった機能でしたが,青い家が新築された時(Papers2.0)ではなくなっていました.だけど,復活.欲しい論文がある時,タイトルを入れて検索すれば,トークンを使わなくてもだいたいヒットしますが,完璧とは言えなかった.トークンがあれば, 完璧と言っていい.
PDFが取得できない場合は...
ご くごくごくごくたまに,検索結果から開いたWebサイトにPDFのリンクがないことがあります.その時は,図の矢印のあたりをダブルクリックすると,URLを直接入力できるます.あらかじめ Webブラウザから Google さんに「****(title, author など) filetype:pdf」とPDFのありかを聞いておいて,そのURLを入力すればOKです.
ちなみに,前述したとおり,Web ブラウザで見ているサイトを Papers で開くブックマークレットもあります
ポップアップで論文内容表示
真ん中のカラム下側に,Cover Flow,Preview,Thumbnails のいずれかで表示できます.が,少し小さかったりします.Cover Flow,Thumbnails では最初のページしか表示されませんしね.
そんな時は,真ん中のカラムで論文を選択しておいて,スペースキーを押すと,ポップアップでPDFが表示されます.ページもスクロールできるし,便利です.上下の矢印キーで次々に論文を選択すれば,ポップアップに他の論文が次々と表示されます.
PS.
Wired が日本でも創刊されて,最近 Vol. 2が発売になっていて,Mendeley が特集されていました.Webでも読めます,こちら.Papersも登場してきます.
科学論文のオンラインデータベースというアイデアには、まったく前例がないわけではない。Zote Ro、Papers、CiteULikeといったオンライン/デスクトップでの研究調査支援サーヴィスはすでに存在している。
「WIRED 知のシェア – 学術論文における理論と実践」
Mendeleyのやっていることは革命的な事だと思ってます.僕も「そろそろ学術雑誌とかいらないんじゃないの!? 」とは思っていましたが,Mendeley の発展次第では本当にそうなるような気もしています.それくらい凄いと思ってます.
さらに凄いなと思ったのは,Social な機能があって,論文毎にどの分野の人が読んだのか,など読者の情報がわかったり,お互いにコメントをしあったりできるのは面白いなと思いました.かなりマイナーな論文でも読者の統計がでてきます(読んでる人が複数人います).
CiteULike を1年くらいだったか使っていたのですが,CiteULikeでは自分と同じ論文を読んでいる人のリストがでてくるのですが,そのリストを眺めるのは面白かったです.同じ目的で読んでいそうな人もいれば,全く違う文脈で読んでいいそうな人もいた(こういうのは,我々日本とか地理的に不利な国にとって有意義な事だと思います.話題がそれるので,またそれは今度に).
それにしても,Mendeley は登録者が圧倒的におおい.これを書いている時点(2011年12月09日)で1,400,994人の登録,119,482グループがあります.さすがにそれは驚異的です.独占的になったら嫌だなぁと思ったので,Papers を応援する意味で,これを書きました.
Papers にも Pepers Livfe というSocial な機能はあるのですが,自分の持っている Nature,Science 論文を見てもコメントがついているのを見つけられなかった.たぶんSocial な機能を使っている人が少ない.
(UIとしては使いやすいので,研究室のみんなが Papers を使っているのなら,Livfe Collections というグループ機能が便利に利用できるような気がします).
Mendeleyで凄いなと思ったのは,コンセプトとSocial な機能くらいで,アプリはしょぼい...やっている事は応援したいと思わせるので,良いアプリなら乗り換えようと思って3時間くらいいろいろと見ましたが,残念ながらPapersとは比較にならないです.Papersの方が良い.逆にMendeley は無料とはいえ,なんでこんなに人気なのかなぁ.
2011年5月6日金曜日
無題
学生の頃,自分のやっている研究の話しが聞きたいと友達が言うから,夜中の10時くらいにわざわざ時間をとって説明していたら,なんだかおかしい雰囲気.聞いてくる質問に非難がうっすらとまざっていて,尋問の様.
変に思って,
「何が聞きたいの? 学術上の議論ならするけれど,尋問に答える気はないよ.」
と言ったら,研究を真似された,と疑っていたらしい.もちろん自分の研究は独自に考えていた事だし,相手の研究も聞いてみたら十分に独立した(異なる)研究だったし,それ以上の問題に発展する事はなかった.
ところで,真似をしているんじゃないか,という非難が終わった後も,相手の言い分を「素直に」聞いていると,言いたい放題で,あげくには,僕は何も考えおらず上の人達に言われるがママに研究しているとか,いろいろと研究姿勢が気に入らないとか言い出す始末.
研究に関わる一つ一つ作業は1人で黙々とこなすような事が多いし,その研究に関わっている人以外はそれぞれがどの様に貢献したかは見えるものじゃない.
僕はそう思っていたから,研究姿勢について言われても,憶測を言われているだけだと思い,怒りもせず(憶測であれだけ言われたら怒れ,という気もしなくはないが),ただ「全てのアイデアが僕の発信ではないけれど,少なくとも実験や解析の具体的な作業は自分が提案したことだよ」とだけ伝えるが,おさまらない様子.
その友達は,前々から,僕が飄々とうまく立ち回っていて気に入らない,と思っていたようで,研究パクリ疑惑がきっかけでそういう関係無い不満まであふれ出した様子だった.
この件は,相手に大学院生特有のいろいろな不安がこんがらがっていたらしい事は垣間見えたので(自分が大学院生でしたからね),仕方のない事とやりすごした.話を聞きながらマイッタナァとは思ったけれど,不思議なほどに怒ったとか悲しかったとかいう感情的な記憶はない.
ふと思い出す事があったので書いた.
PS.
もちろん,その友達にとって「うまく立ち回っている」ように見えただけで,僕にだっていろんな衝突や葛藤があったは言うまでもない.だれだって,たぶんそう.
2010年11月2日火曜日
科学的根拠はありません.
※下記,単なる思いつきと思いつきの比喩表現です.科学的根拠はありません.
もう11月ですね.ここ2,3ヶ月は,ずっと,いろいろと終わらなくて泣きたい気分です.もちろん,終わらせた事も多々ありますが,それに対しての充実感がないというか...
##
科学リテラシーという言葉がありますあるそうです.自分のいる分野だと神経神話というが流行っているらしく,なおさらリテラシーが必要だとか.
リテラシーは主には情報の受信者側についての問題として語られているんですが,神経神話に関しては,情報の発信者に対しての批判も大きいようです.いろんなところで神経神話に警鈴を鳴らし続けている方々もいます.
警鈴をならす事自体は,良いと思うんです.ただ,鈴の音が後ろ向きというか,他人をよせつけないような排他的な音色に聞こえてしまうのは僕だけかな!? 個人的には,生理学を中心とする今の日本の神経科学業界は,かなり閉鎖的だなぁと感じているので,その印象と重なってしまいます.
やるならば,「まちがったことを言っちゃいけない」,「正確に言え」と言うのではなく,「本当はこうですよ」「こう表現するのが正確ですよ」と後からいちいち訂正してあげるのが,良い方法だと思うんです.やるならば.
「科学的根拠を宣伝文句にする商品には文献情報をつける」といった提案はちょっと勘弁して欲しいなぁ.あーしなさい,こーしなさい,と言われる社会はかなりイヤだ.殺生するな(主に人間に対して)とか最低限の「してはいけない事」をみんなできめたら,あとは勝手にしたら良いと思うんです.
あと,情報を発信する側の「倫理」や受信する側の「教養」の問題で,手続き(制度)に還元して解決するのはまちがいじゃないかな.倫理や教養を育てるのは,やはり基礎教育の問題で,長い時間をかけて解決する問題ではないでしょうか.
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Webが,正確な情報が1つ増えるために万のクズ情報が飛び交う場だとしても,僕はWebを歓迎します.
というか,そもそも,正確な情報が1つが生まれるためには,万のクズ情報が必要なんだと思うんです.新しい情報ほど,まわりにクズ情報がびっしり張り付いているもんだと思うんです.そのうち,みんなでクズ情報を洗い流して,誰でもその正確な情報にたどり着けるようになる,というのが,情報が流通する構造ではないでしょうか.発信する事自体が目的である場合も多々あるし,その場合は内容なんてどうでもいいわけです.多かれ少なかれ,みんなそういう内容の無いコミュニケーションを必要としているでしょ.僕の雑談のほとんどは3分記憶する価値もないクズ情報.
基本的には,現象を理解するにはたいていは背景となる知識が必要で,ジャーゴン(術語)を使わないなら,それらを全部説明しなくちゃいけない.発信する側にそれを求めるのは,無理でしょう.専門家は黙るしかなくなっちゃう.
それよりは,とにかく何かを発信して,何かを受信する事が重要です.そのうち,専門家と専門家でない人達の間に新しい言語を作られるでしょう.それがコミュニケーションだと思います.一般に使われる新しい言語が,専門家コミュニティと違うからって,専門家はひがんじゃいけないw.コミュニティが違うんですから.フランス語より英語の方が正しい,とかはないのと同じだと思います.
##
僕の個人的な体験では,初対面の人でも,自分が脳とか認知科学を研究していると伝えると,相手から脳の話題を切り出してくれることが頻繁にあります.僕はその人の知っている間違いを起点にして,(たぶん)正解に誘導してあげられる.話しが盛り上がる.「脳って何? 難しい事やってるんですね...」で終わってしまって何にも起点がないと,それを探すのにとても時間がかかりますよね.そういう点では,ちまたで活躍される脳科学者の恩恵を受けてます.
ということで,TVでの脳科学者のお話しであろうが,学会での神経科学者の講演であろうが,居酒屋での酔っぱらいの与太話であろうが,脳の話しをしてくれる事に当事者として歓迎します.
PS.
こういう問題に興味のある方は,この本,必読では.ある生物に関する科学的な報告書.
「鼻行類—新しく発見された哺乳類の構造と生活」Harard Stumpke 著, 日高 敏隆, 羽田 節子 訳. 動物学者でケンイある日高さんの訳本です.
追記: 2010 Dec. 7
弁護士の方(この人は科学と法律の関係の研究もしているらしい)と話したら,法律に関わる人は強かだと.裁判で勝つためなら,科学的ではないと知っていても,巷で科学らしき事と認識されていたら,それはどん欲に利用すると.うーむ,どうなんでしょう.この方は,これ以上の意見を言われたわけではありませんが,悪用される事を制限するために情報発信の手続きを面倒にするのはちがうかなぁと.やはり悪用されている事を防げばいいわけで.
2010年9月24日金曜日
Can Not Even Criticize
こないだ機能を物質に還元する方法は流行らないでほしいと書いたんですけど,先週の某有名雑誌に,領野間の結合性(connectivity)を使った指標で,年齢を予測するという論文がありました.結合性を指標にするなら,皮質の構造よりは機能との因果関係に迫れそうじゃない!? と肯定的な気分で読み始めたんですけど,結果の解釈が...
主の結果はSVR(Support Vector Regression, Support Vector machine for Regression)を使って,回帰問題を解いていて,さらには複数のモデルからAICを使ってモデル選択までしていて,ここまで行った手続きは無難そうに思える論文でした.
ただ,そのあとに,SVRの重み(を使った指標!?)を視覚化した図があって(この論文で目が惹かれるのはコチラの図だったりする),この論文の場合,重みを球の大きさに対応させて,脳の図の上に重ね書きされてる.あたかも,球の大きな領野が重要であるかのように...
(?△?)
確かに,SVMでもSVRでも識別境界や回帰関数を決めるのにサポートベクター(重みのかかっているROI)は効いてきます.その点では,重要なROIですけれど.
ただ,そのROIの脳活動は,情報を表現する特徴を有しているかという点では,重要ではないのでは ? 逆に重みがゼロになっているROIの方が,情報を表現していたりするのではなかろうか.診断の時に,大きな球で表されている領野を見て判断すればいいと言っているようでもあり,まちがっていないか?
あと非線形なカーネルなんか使ってたら,射影された判別のための特徴空間がどんな空間だかは,実際的には,全く解釈できないだろうと思う.
一時期流行ったSVMを使ったfMRIのDecoding研究でも,「識別に有用だったボクセルの値に情報表現があることを言えない」ということはみんなが気がついていて,巧妙に情報表現とは論点をずらしていました(それでも,情報表現について何かしら言えるんじゃないかというのが,期待でした.その期待はまだ消えていないと思いますが).今回は,「識別に有用だったボクセルの値に情報表現がある」と言っているのですよね.まずいんじゃないかな.
とはいえ,本文にもSupplementにも,図が何を計算した結果なのか明示的に書いてないので,何をしたのかよくわかりません.ということで,断定的に間違いとも言えないので,論文名は出さない.
神経科学の論文は,解析を再現できない論文が多い.数式も併せて説明を書いておいてほしい.Supplementでいいから.ただでさえ怪しいfMRI研究が,ますます相手にされなくなってしまうのでは.
いつぞや,機械学習な人たちに自分の先行研究として,ある論文を紹介したときに,とある解析の説明に数式がなくて,「それは書いてなかったんですよ」と言ったら,「それは書いてあるだろう.そんな論文が査読に来たら,リジェクトとするぞ」と言われて,おれがちゃんと読んでないみたいな雰囲気になっちゃって,......orz
Not Even Wrong, by Pauli.
2010年9月21日火曜日
解析方法とか
「[統計]AICとDICに関する非常にアヤしい自作メモ(その4)」Take a Risk: 林岳彦の研究メモ に(この記事の主となる話題ではないんですけど),
ただ私は一介の統計ユーザーに過ぎないので、原理的なことはさておき実務に耐えうれば何でもよいというのが正直なところであります*10。と書かれていたのに対して,
(中略)
*10:ただ「実務に耐えうるかどうか(の範囲の限定)」が原理的な部分にも関わる問題だったりするのが厄介なところであります
「実務の人が原理を考えずして誰が考えるのでしょうか? 統計の理論家というのは数学的に細かいことが好きで、 どうも原理を考えるのに向いていないように思います. あと、しばしば統計手法の問題は「生態学とはどういう科学か」 「科学であるというのはどういうことか」というところまで遡るので、 そうなると応用数学のレベルでは答えようが無いかも.」というコメントがあり,慧眼だなと思った次第.
海外の会議に出てポスター発表などを聞いていると,ヨーロッパでは研究の分業化は進んでいるようで,学生だかポスドクらしきヒトのポスターでは,「解析をしたのは他の人だから,俺,知らんもんね♪」と悪びれずに言うヒトが結構いて(逆パターン「あたし,計測とか実験の事は知らんもんね♭」というのもある),カルチャーショックをうける(このエピソードは前にも書いたような,まぁいいっか).
現象を表現するモデル(生成モデル)として数理を使わなくても,定量的な実験では何らかの数理的な解析(判別モデル)が必要なわけで,どんな解析方法を使うかは研究者の現象に対する認識(生成モデル)を反映するものですよね.
【論文】交わる知性,ベイズ最適で.
Bahrami et al. Optimally interacting minds. Science (2010) vol. 329 (5995) pp. 1081-5
論理と実験とデータに?? がつくので,ちゃんとは紹介しないですけど,テーマとしてはおもしろかったので,簡単に紹介.
物事は複数人で相談して決めた方が良い結果になる場合があるのか? を調べた研究.
で,結果は,
2人で相談した結果というのが,個々人の判断をベイズ的に統合した結果になるという.場合によっては,相談して決めた方が良い結果になる.
ヒトにとって検出が簡単ではない視覚刺激をもちいた2択課題で,どちらが正解かを決断してもらうんだけど,個別に決断してもらうと,当然,正解率の高いヒトと低いヒトが1人づつ出てくるわけです(同じ正解率という事もあります).で,この論文のモデルが正しければ,2人で相談して決めた結果が,正解率が高いヒトよりも高くなる場合がある.おおざっぱに言って,能力の低いヒトが高いヒトの半分以上であれば,相談して決断する価値がある.2人の能力に差がありすぎると,相談しても良い結果にはならないけど.
組織で,能力の低いヒトが高いヒトの半分くらいのところになるように階層を区切って,意志決定のグループをつくったら良いのかしらとか思ったり.
ベイズでヒトの行動を説明した論文としては,Körding & Wolpert 2004, Nature の論文が,論理もデータも完璧という感じなんで※1※2,今回の論文はどうにも見劣りします.ただ,素朴な疑問になんとか取り組んだってのは,好きでした.
※1:
Körding & Wolpert 2004は,全てが完ぺきという印象の論文なんですけど,よく調べて実験条件の図などをみると,文章で読むより随分と特殊な運動をさせている印象.すごい狭い範囲でちょこちょこと腕を動かす課題なんで,そこにちょっとがっかりしますけど.
※2:
正確には,タイトルにBayesian integrationとあるものの「ベイズ的に情報が統合されている」とは言えなくて,単に「情報が統合されている」と言っている論文です(他にカルマンフィルターで説明した論文があって,併せて考えればモデル選択していなくてもベイズかなとは思わせるのですが).今回紹介したBahrami et.al.,2010の方は,他3つのモデルの比較をしていて(この比較の仕方がイマイチなんだよなぁ),ベイズ的に統合されていると主張しているので,Körding & Wolpert 2004と比較して難しい事を主張しようとはしている.まぁ,今回の場合,情報が統合されている(相談した方が良い)というだけでは新規性ないですからね.
2010年9月19日日曜日
いまさら機能を物質に還元して説明する方法は流行らないでくれと願う.
今週のサイエンスに掲載されている論文とか(いや,もう先週ということになるけど).
最近,脳領野の厚みだの大きさだの脳の構造と特定の機能が相関している事を調べる研究が多い.頼むから,そんな研究が多勢にならんでくれと願うばかり.
機能は物質(ハードウェア)に依存するから,もちろん機能を調べるとっかかりとしては重要.でも,とっかかりとしての役割だけで十分じゃない!? fMRIでは領野での機能局在を調べる研究がだいぶ収束しつつあるように思えるし,「近代骨相学」と呼ぶ人までいるご時世に,またそこに戻りますか...という感じorz
機能局在をやるにしても,構造を根拠に説明するんじゃなくて,もうちっとがんばって,せめて脳活動を機能局在の根拠にしようよ,とか思うわけです.DCM(Dynamic Causal Modeling)やGranger causalityとかネットワークを解析する方法も整備されつつあるし,そっちでもうちょいがんばろうよ,とか思ってしまうわけです.
Diffusion Tensor Imagingの形態学的な情報を元に,領野間のネットワークを解析するとか,形態学は機能を知るためにいろいろと有用だと思うんですけど,機能を知るのに領野の厚みだの大きさを調べる意義って何かわからない(臨床とかでは簡単で適当な指標になるんでしょうけどね,基礎研究の人がそれやって意味あるのか!?).
機能までの因果関係が遠すぎると,なんというか,「風が吹けば桶屋が儲かる」的相関にならないかなぁ.
こういった構造の解析,Voxel based morphometry (VBM)と言われて,お手軽にできるようになりましたし,流行りそうな気がするのが,なんともイヤ.やれることなくなった人たちがこちらに流れていきそうな気がしてならないのが,イヤ.批判するなら論文読まなくちゃとか思って,まじめに読んで結局がっかりするのもイヤ.
2010年9月12日日曜日
臨床,意志決定,わからない
先週末は,神経心理学会が行われて,会場の手伝いをやらされたこともあって,まじめに講演を聴いていた.発表者のほとんどは医者やリハビリ関係の人.自分がこの分野の当事者でないと思えば,いろんな症例が紹介されていて,単純におもしろかった.
診断方法の話しも興味深かった.労災や保険のために診断する時には,病状に応じて等級判定をするのだけど,精神疾患だとなかなか証拠を集めづらいと.行動的には問題あるけど,脳には損傷がなかったり.病気だと偽る人もいるし,故意でなくても,(補償金とかを)もらえるものはもらいたいという心理が無意識に働いて,症状として出る事もあるらしい.そんな中で,どのように診断するか.
限られた時間と情報の中で意志決定する方法がおもしろかった.こういう臨床での意志決定に比較したら,基礎科学なんて意志決定しないと言っていいですからね.確定的な証拠が見つかるまで,「わからない」という態度でいられる.
臨床だと「わからない」ではすまないですよね.それは,手続きを進めなければいけないというのもあるし,多くの人にとっては「わからない」という状態は,とても不安で早く脱したい状態なんだと思います.
僕にとって,「わからない」というのは上に凸の関数のてっぺん(不安定な平衡点)でバランスとっている感じ.不安定とはいえ平衡点なんで,バランスの取り方さえ覚えれば,そんなに居心地もわるくないという感じ.多くの人がテキトーな理由をみつけて安定な平衡点に行きたがるところを,証拠がでてくるまで予断なくバランスできるのも科学者の資質かなと思ったり.
2010年9月8日水曜日
参加者の資格
組織に属するならアドミッション・ポリシー(組織の理念とか,構成員に要請される資格とか役割とか)を守らなぁ.できないなら退場しなぁ,あかんやろ...大学には,金を払って組織に属している学生という立場の人が多くいて,時にして,お客様扱いだったり,お客様態度だったりするけど...
##
一方で,
組織を運営する時の原則(アドミッション・ポリシー)があったとしても,個別の事象は全て例外として個別に対応するのも良いと思ってる.特に小さい組織なら,全てを例外として扱っても制御できたりするから.
ただ,全てが例外ならば原則はいらないかと言えば,そうではないでしょ!? 例外として扱っても制御できなければ,最終的には原則に照らし合わせて,立場にある人が原則を守れない人に対して粛々と退場を促さないとあかん.
退場を促す立場がみんなに与えられているのか,特定の人だけなのか.たいていの組織は特定の人にだけ与えられているから,特定の人がやらないかんのでしょうね.きちんと意志決定しないと,...... ...
組織が死んじゃう.
原則のない,もしくは原則を遂行できない方が多いなぁ.
2010年9月4日土曜日
予測か推定か.
久々に研究に関連した話しを.
予測|Prediction と 推定|Estimation,つい最近まで僕の中で言葉の使い方は随分曖昧でした.どう使い分けますか?
【予測】
将来の出来事や状態を前もっておしはかること。また、その内容。科学的根拠が重んじられる。
「 大辞林」
将来どうなるかを得られた情報などに基づいておしはかること。また、そのようにして得たもの。「予想」は将来を推測する意で広く使い、「予測」は具体的なデータなどに基づく意で使うことが多い。
「明鏡国語辞典」
【推定】
①周囲の状況や情報に基づいて、おしはかって決めること。推測決定すること。また、そのようにして得たもの。 ②法律で、明瞭でない法律関係または事実関係について、否定する反証が成り立つまで、それを正当なものとして扱うこと。
「 明鏡国語辞典」
(1)はっきりとはわからないことをいろいろな根拠をもとに、あれこれ考えて決めること。 (2)〔法〕 明瞭でない法律関係・事実関係について一応の判断を下すこと。 (3)〔数〕 統計で、ある母集団から取り出された標本をもとにその母集団の平均・分散などを算出すること。 (4)文法で、何らかの根拠をもとにあれこれ考えて断定する意を表す言い方。口語では助動詞「らしい」、文語では助動詞「らし」を付けて言い表す。
「大辞林」
「予測」に関しては,未来の事に対して使うという感じは持っていましたが,一方で,「推定」は,静的な事に対して使うというような感じは持っていました.例えば,「状態」に対して使うとか.ただ,推定と使うところを予測としても良いような気はしていた.
脳の情報表現と行動の2つの「予測(推定)」が登場する場合に,どちらか片方だけを使うと文章を読んでいてわかりにくくて,使い分けたかった.それで,自分の研究を説明する時には,感覚的に,行動については「予測」,脳活動で表現されている事に対しては「推定」と,使っていました.そんな話しをしたら,観察可能な事に対して「予測」と使い,観察不可な事に対しては「推定」と使うという議論をしたことがあったと教えてもらい,あぁー,なるほどと.僕にとっても,腑に落ちる説明でした(僕の感覚的な使い方も,偶然,それと同様の使い方にはなっていたのですが).
この説明で使い分けると,ヒトや動物の行動については「予測」,その時の脳活動の情報表現については「推定」となる.ただ,脳活動とは言っても,神経活動の発火率やBOLD信号は,観察可能なので,「予測」を使うのが良いのでしょう.fMRIのデコーディング研究で言うと,Tong et al., 2008 はBOLD信号を「予測」することが研究の主であったし,Miyawaki, Uchida et al., 2008 は情報表現を「推定」することが研究の主だったという違いがありますね.
僕は,脳活動の「予測」にはほとんど興味がなくて,脳の情報表現の「推定」に興味がある. 特に,認知行動レベルの情報表現について興味がある.ちなみに,脳の情報表現の「推定」に関しては,どこまでいっても「推定」しかできないというのが,認知行動レベルにおける脳科学の難しさでもあるんでしょう.「推定」だけだと,その性能を評価できませんから.書いた勢いで,ちょっと皮肉を言えば,「脳活動を計測すれば,それまでの心理学では分からなかった事がわかりそう」と思っている無垢な方々などには,その辺の誤解があるのかな,と思ったり,思わなかったり.
2010年7月9日金曜日
十七条
ちゃんと適切な場面でレッドカードも出していましたしね.
レッドカードを出すのはヒジョーーに勇気がいります.
トレーニングしてなければ無理でしょうね.
2010年7月8日木曜日
思慮,イビチャ・オシム
それは,より自由に生きるということだ.
2010年7月7日水曜日
ワールドカップ日本代表傍観記
ワールドカップ,日本代表の試合を,かなり退屈に,少し喜んで,やっぱり残念で,ちょっと悲しく見てました.
ワールドカップで優勝したチームのサッカーは,とても影響力をもつ.そのあと,いろんなチームが真似をするし,スタイルの流行を作る.もちろん,チャンピオンズカップで優勝するチームだってそうだし,日本の高校サッカーで言えば,高校選手権で優勝したチームのサッカーだってそう.だから,おもしろいサッカーをするところが,優勝してほしいと願ってる.
監督だった岡田さんは,ベスト4と言うばかりで,やりたいサッカーがわからんかった.「ベスト4」って目標だけでは,どんなサッカーをするかというビジョンは全く見えない.八百長してでもベスト4に行きたいかって聞かれたら,そうじゃないと答えるはず.サッカーにプライドを持っている人たちが,「サッカーをして」勝ちたいはずで,じゃぁ,次の問いは,「どういう」サッカーをして勝ちたいかって事だったと思う.科学の世界で,ただただNatureやScienceに掲載されたいっていうのでが,幼稚な目標だっていうのと同じだと思う.オシムさんの時は,どんなサッカーをするのか言葉で表現してくれて,そして試合でもそれを表現してくてたから,とても楽しかった(やっているサッカーが良いサッカーだと個人的に思ってたことも楽しかった要因ではある).
で,結局,ワールドカップでの舞台で日本代表が表現したのは,忍耐を強いるサッカーだった.攻撃では自分たちの特徴であるパスワークを封じて,個人技頼みにしてしまったから.本田と大久保と松井の3人の誰かが個人で何とかやってくれっていう,それだけだった.3人の連携で崩すってわけですらなかった.完全に個人頼みで,無茶な頼みを頼まれたのが3人.
攻撃にチームとして意図がなくて,運頼みだったから,ゴールが入る予感や試合展開みたいのがほとんど感じられなくて,とても退屈だった.試合を見ていて,寸分先も予想できない展開てのはつまらないモンだなぁと.次の朝のニュース速報で結果だけ見ればいいような試合でした(試合内容を見ないとそれは分からないのですけど).
象徴的だったのは,パラグアイ戦,川島からフィード(攻撃陣にボールを供給すること,必ずしもパスではない,と定義する)が,1-2回をのぞいて,全てパントキックなどロングフィードだったこと.ロングキックをして,それを拾うなんてのは,ほとんど運頼み.
悲しかったのは,このサッカーの延長に,前にやってた日本の特徴的なサッカーがないような気がしたから.こんなサッカーが日本でもてはやされて,流行るようになったら最悪だなぁと思ったから.正直,オシムさんが倒れてからというもの,超保守でナイーブな岡田さんの代表試合はおもしろくなくて,今回のワールドカップはそのトドメだった.
残念に思ったのは,ワールドカップの舞台で,日本のパスサッカーがどれだけ通じるのかを見られなかったこと.デンマークでやったように,カメルーンやパラグアイ相手だったら,恐れずにパスを回して攻撃を作るという挑戦をしても良かったんじゃないかなと思った.強い相手とやった時だって,例えば,年明けにオランダとやった親善試合では,前半45分は何回もおもしろいパス交換からの攻撃が見られてた.それで大敗したって,それが世界との距離なのだから,よかったんではないかなぁ.
どんなサッカーをしたいか,それをどうしたらピッチで表現できるかってのが,サッカーに関わっている人の解くべき問題.ぎりぎりサッカーと呼んでもらえるアンチサッカーをして,勝ってもホントは何の意味もない.幸か不幸か,サッカーが唯一の希望というわけではない日本なら失敗しても致命的ではないし,それでいてサッカー選手をとりまく環境が悪くない日本では,経済的にも文化的にも挑戦できる余裕を持っている国だとおもうのだけど.アフリカ諸国や南米の中堅国よりはずっと勝つことのプレッシャーはなかったはずなんだけど,日本の文化である自分で首を絞める慣習にならってしまった.
閑話休息:
パラグアイやウルグアイが守備的なのは,大陸予選でサッカー大国ブラジルやアルゼンチンと戦わなければいけないからというのを言う人がいて,妙に納得した.南米には今回は出ていないけどコロンビアやエクアドルなどのそこそこ強い中堅国もいる.一方で北中米・カリブ海に属するメキシコ(17位,2010年5月)は,パラグアイ(31位,2010年5月)やウルグアイ(16位,2010年5月)と同じくらいの実力だと思うんだけど,大陸予選で強い相手はアメリカくらいで,しかも出場枠が3枠もあるんで,彼らの好きなパスサッカーをして勝ち上がれる.いつだったか,残り10分で負けているのに,ひたすらパスを回して,パワープレイに全く走らない.センタリングすらあげない.パスとドリブルで中央から崩そうとしていて,さすがにアホかな,と思っていたのだけど,徹底したパス回しで終了間際にゴールッ!とりはだがたった.僕のメキシコサッカーのイメージは,この印象が決定的になっている.
日本にも,あの時のメキシコのような試合をしてほしかったわけです.ただ,勝つためだけのサッカーをせざるを得ない要因があったのもわかる.日本には実力がなかったり,直前の親善試合でうまくいかなかったり,実利主義的な日本だとやっぱり勝ちを求める記者やサッカー関係者が多くいたこと,など,など.
あと,あの我慢強いサッカーをとても高いレベルでやったってのは,すごいことでした.11人全員が精度良く守備のバランスを考えて,それを忍耐だけで実行するようなサッカーを90分(パラグアイ戦では120分も),よくやれるなという感じでした.もともとはパスサッカーをしていた選手達が,割り切ってあの戦術を徹底したことは本当にすごかった.選手達のメンタリティはすごいなぁと.少なくともアフリカやヨーロッパの国では,あれはできない.
で,ベスト16に進んでみたら,その反響はすさまじく大きい.僕もデンマーク戦はうれしかったし(特に本田が翻弄して,岡崎が決めたゴールは!).何人かの選手は,ステップアップ(海外移籍)の機会を得られようとしています.グループ予選で敗退してたらこれはなかったから,勝てば次の可能性が大きく広がるんですよね(だからといって,勝つことを目標にするなんて全く思いませんが,僕は).
そして,日本代表の試合が終わってしばらくたった今では,さっきは「この延長に日本のサッカーはない」と書いたけど,もしかしたら,これを土台に日本の特徴的なサッカーができるのかもしれないと思いはじめてたりもする.最後の最後,中村憲剛を中心に攻撃的なドリブルとパスワークとを見せてくれたのが,希望でした.
てことで,次あたりは西野さんあたりが監督にならんかなぁ.
30人程度の小さな組織について,構成員として.
組織がうまくいかない時,
それを誰かの責任として語るのは賢いことじゃない.
組織の中にいる人がその組織を批判するのは,
第3者が批判するのとは影響がちがう.
なにか問題意識を持っているのなら,
その問題意識を,顔を向き合わせた公の場で,表明して,
共感してもらって,
自分がそれに対して何をできるのかを提案すべき.
他の人も何ができるのかを表明してあげる.
他人に何をしてほしいとかではなくてね.
(上の人は,公の場で問題意識を表明する人がいたら,
些細なことでもシリアスに受け止めるべきかな.)
それでもって,みんなが持ち寄って出てきたモノが
その組織の限界だから,それ以上は諦めること.
ただ一方で,持ち出したものを組み合わせれば,
大抵のことは何とかなるんじゃないのかなぁと思う.
ちなみに,できないことをできるようにするのは,
個人で勝手にする努力だから,他人が介入しちゃ駄目だと思う.
仕事の場で,できそこないを上の人がクビにしないのだったら,
それは尊重すべきで,誰かがとやかく言う問題じゃない.
(どんなに優秀な人員が集まっている組織にも,
その組織の中で最低能力の人間が1人はいて,
それを気にして追いやったとしても,
次に低い能力の人間が気になるだけではないかと思う.)
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どんな良いシステムだって,構成する要素に不具合があれば,
うまくいかなくて,
要素の問題てのは小さな不具合だったりすると思う.
小さな不満を小さい内に解消する術を持っておくべき.
そういう点で,
組織とは独立に個人が対処できることは,
日常的にいろんなところで関係性を気づいておくこと.
所属している場所にしか友達がいないなんて場合,
所属している組織の不満がたまると,そのことばかり考えてしまい,
妄想が妄想を呼び,
あらぬ不満まで考えてしまう人もいるんじゃないかなと.
日常的に,自分の所属とは関係ない友人や家族がいれば,
不満なんて忘れてしまうし,
忘れてしまう程度の不満だったら忘れてしまった方が良い.
研究室を所属にしている学生なんかは特にそう.
一時的には24時間研究室にいる人もざらにいるだろうし,
数ヶ月間,家と研究室の往復だけなんて事もありえて,
いつのまにか研究室依存症になってる.
博士課程まで来ると,学部時代の友達なんかもほとんどいないから,
ちゃんと他での関係を見つけておかないと精神的にしんどい.
多くの小中高生みたいな状態ですな(←所属している組織が,家族と学校).
その組織に依存症なくせに,不満を持つのでたちが悪い.
さすがに知恵のついた大人なんだから,自分で何とかしましょう.
今,自分の身に,他人が笑ってくれないコトが降りかかっていたら,
少なくとも自分が笑えるまでは待ってから,言うようにしたらいい.
もしくは,スゴイ早い段階,深刻になる前の笑えるうちに誰かに言ってしまうのも手.
自ギャクにしても他ギャクにしても,
自分も含めて誰1人笑えないようなら,言わないのが賢明.
言うならヘラヘラ笑って言えばいい(それで軽薄に思われても気にしちゃいけない)
と常々思っている.了.
2010年4月22日木曜日
感動的なおつかい!
おぉ,帰ってくるめどがたってる!
行って,取って,帰ってくる.スゴイなぁ.
「はやぶさ」がわからない方はこちら↓
もすこしまじめに何やってるかはコチラ↓
宇宙版プロジェクトX 小惑星探査機はやぶさ#1(youtube)
はやぶさ、地球へ〜帰還カウントダウン〜特設サイト
2010年4月14日水曜日
お引っ越し
などなど、今年に入ってからは公私ともにいろいろと大事があり、あっという間でした。それでも今のところ、新しい環境だったり5月にもイベントがあったりで、緊張が続いているのか、それほど疲れた感じはしていません。これで、気の緩む一週間かがあると風邪をひいたり熱を出して2、3日寝込むのが自分のパターン。意識はしないのですが、意外と日常的な緊張が高いので注意しなくては。6月初旬くらいが注意だろうか。
環境を移るのは、それだけで目新しい仕事の進め方とか経験できるし、研究室の運営なんかもいろいろと違うという事が発見できるので、楽しい。しばらく気は抜けませんなw
工学の研究室 → 情報学の研究室 → 医学の研究室(工学寄り)と移ってきて、今度は情報学(心理学寄り)の研究室です。日本だけでも色々だなぁというのが自分の印象。
